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02/CUBE

noon

一条美由紀、岡野智史、小川泰、kaus、小林晴郎、コヤマイッセー、Fish Born Chips、藤田チャコス、橋本佐枝子(企画)

会 期 2023年6月13日(火) - 2023年6月25日(日)
時 間 11:00 - 20:00 ※最終日は17:00まで
場 所 CUBE 1, 2, 3
料 金 無料
主 催 橋本佐枝子

描いて、作って、生きてきた。表現することをやめなかった8名の作家による渾身の 展覧会。人間の表現と生きることに関する心理士による企画展です。

精神科医・心理学者のC.G.ユングは、人間の人生を太陽の運行になぞらえました。誕生は、太陽が夜の大海から登っていく夜明けであり、児童期・青年期は太陽が広い多彩な世界を照らしている午前であるというわけです。太陽が正午に達すると、同時に下降が始まり、午前に得られた全ての価値と理想は転倒します。これまで外の世界へと向けていた光は自分自身を照らすために回収され、自分自身を考察する源となります。午後は輝かしい午前の付録ではなく、多くの人間にとって、まだ生き尽くしていない多くのことに向き合う時間であり、可能性との再会の時間なのです。
本展覧会は、今まさに正午“noon”にいる8名の作家たちによるグループ展です。
昨今の美術界では(どのような分野においてもそうかもしれませんが)、若い作家の表現に注目が集まりがちです。新しいこと、社会など外に関心が向いていること、流行に乗ることは刺激的で興味深いものではありますが、人間の人生と表現はそれが全てではありません。本展示noonの参加作家たちは無駄なもの、相反するもの、見たくないもの、非合理的なものを否定せずに向き合い、その経験を作品として昇華してきました。
日常生活に中では切り捨てられるこれらのものと向き合う彼らはどのような正午を体験し、どのような軌道を進んでいるのでしょうか。また、作品たちは鑑賞する私たちに何を伝えているのでしょうか。
ぜひ、直接作品からその断片を受け取り、鑑賞者の皆さんにとってもご自身の表現や人生について触れる時間になれば幸いです。
企画:臨床心理士・公認心理師 橋本佐枝子

一条美由紀

1994年-2001年 デュッセルドルフ美術アカデミー中退
作品が完成して、改めて自分の作品を見た時に、その中に思っていなかった自分を発見する。
人間の心理は複雑だ。今の感情が本当にそのとおりなのか?
深く探って奥底にあるココロを見つけると見たくなかった自分もいたりする。
ずっとそんな複雑な人の心理を表現したいと思ってきた。
最近は自分が年齢を重ね今だからこそわかるココロを描きたいと、おばさんばかり描いている。
作品に至るまでの失敗ドローイングに埋もれる中、隠れていたココロを見つけた時の喜びは最高である。
 
岡野智史
1979年 埼玉県生まれ
2004年 武蔵野美術大学造形学部油絵科卒業
油彩、水彩、鉛筆、アクリルを使った平面作品を主に制作。
油彩画と鉛筆画は、試作と修正を繰り返す素材として様々な絵画のかたちをもさくしている。
エアブラシと特殊な技法を使い、モニター図像を平面に再現する試みが近年のテーマとなっている。
 
小川泰
1981年茨城県生まれ。2006年武蔵野美術大学院修了。
子どもの頃、退屈な授業の合間に教科書やノートの片隅に描いていた取るに足らない落書き。
それが私の創作の原点であり根幹だ。
私の作品はペインティングに落書きをコラージュして作られている。
デジタルで作られた、レイヤーが手前から奥へと縦横無尽に入れ替わる様な空間のイメージは、エアブラシによる描画によって再現されている。
そのイメージはランダムに分割され統合され複雑で多層な行程を経ている。
一見複雑でありながらも無用な行程を経ることが、作品づくりには必要だと考えている。
結局のところ落書きを作品とするために膨大な時間と手法を注ぎ込み、計画し実行しては失敗を繰り返す。
手順通りに行かない行程に挑むことが、先行きの見えない事、完成のない道、答えのない問いといった不確定要素に挑むことが出来る、アートなのだと思う。
 
kaus
2006年 スカルをメインモチーフにシルバーアクセサリーを独学で制作開始。
2017年 帽子に着けるアクセサリーを中心に真鍮製のピンブローチの制作を開始。 2019年 大型ハンドメイドイベントに出展を開始。ガスマスクを着けた蝿、本当は天国に連れて行きたい悪魔、死神の大鎌を持った天使等、不吉カワイイをテーマに商品を展開している。
作品テーマは「フキツ可愛い」。
生き物や昆虫から西洋の装飾品などの幅広いモチーフで、ピンブローチを中心にアクセサリーや雑貨を制作。
 
小林晴郎
20代の半ば頃から、普段撮り貯めた写真をもとに描いています。発光している状態に興味があり、アクリル絵の具をにじませたり、パステルでぼかしたりしています。絵画を標榜していながら、矩形でなく不定形なベニヤ板を支持体に選んだのは、美術の長すぎる歴史から描く実感を自分に取り戻したかったからだと思います。現在は、二つの絵画を同時に描いて一組で展示する方法を試しています。
 
コヤマイッセー
1980年東京都墨田区生まれ。2004年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。2020年から毎年JINEN GALLERY(日本橋)にて個展、2019年「第2回アートハウスおやべ現代造形展」大賞受賞、「第5回宮本三郎記念デッサン大賞」入選など展示歴多数。
「幸せすぎて怖い」って誰の言葉だっただろうか。わかっていると思っていることがわかっていない。「あーしたい、こーしたい」から浮かぶ「あれがない、これがない」。
絶望から生まれた希望、希望から生まれた絶望を反転させた世界には何があるのか。
「このまま」を「そのまま」にして受け入れることはできるのか。
これが、この世界で無力であるがゆえに開かれる私たちにとっての神話。
 
Fish Born Chips
2012年秋より装飾デザイナーチームとして始動。
2015年4月『Fish Born Chips合同会社』設立。
合理性や機能性とはかけ離れた〝ムダなモノ〟をコンセプトに、主に革を使用した装飾品を夫婦で制作。帽子をメインに、ハンドペイントとハンドクラフトにこだわりエンターテインメント性溢れるモノ作りを展開。身近にある日常を、非日常へと昇華するハンドメイドアーティスト。
COMME des GARCONSとのコラボレーション、STAR WARSやディズニー公式ライセンスアイテムの制作など幅広く行う。
 
藤田チャコス
1982年神奈川県に生まれる。2011年多摩美術大学大学院美術研究科修了。
主な個展: 2019年「藤田チャコス展」(DORADO GALLERY/東京)
2020年「藤田チャコス展 ―日々―」(澄光Gallery/東京)
2022年「チャコス個展 ―手のひらの中の景色―」(art space ruriro 埼玉)
その他グループ展・出品 :多数
幼い頃親しんだ児童文学や民藝品の中にある透明性に憧れ描いています。中高生の頃に不登校になり、合わせて2年くらいしか登校出来なかった自分の憤りもたまに噴出しています。最近は穏やかな絵が増えましたが、強い絵もまた出ます。
相反する世界や内側を絵によって描いています。
 
橋本佐枝子(企画)
1983年兵庫県生まれ。2008年慶應義塾大学文学部心理学専攻卒業。2010年明治学院大学大学院臨床心理学研究科博士課程前期修了。臨床心理士、公認心理師。相模原市青少年相談センター、東京都スクールカウンセラーを経て、現在は東京都内の児童養護施設において心理療法担当職員。専門は子どものプレイセラピー。心理士でありながら自身の作品制作(2023年JINEN Galleryにて個展)、展覧会の企画(2020年「カナタのてざわり」ART TRACE GALLERY等)、子ども絵画教室講師もしている。アートと心理学の狭間に身を置き、実践を通して人間の表現について考察を続けている。