福島県葛尾村でのアート活動を、「手」の営みをテーマに紹介します。
Katsurao Collective は、2011年の原子力災害により全村避難を経験した福島県双葉郡葛尾村で、アーティストインレジデンス「Katsurao AIR」やワークショップ「かつらお企画室」などの多彩なプログラムを展開しています。本展では、これらの取り組みを通じて生まれた作品や成果物をご覧いただくことで、地域の歴史や暮らしに根ざした実践を「手」の営みというテーマから捉え直します。手仕事やアート作品を通じてひらかれる、地域に潜む新しい可能性をご体感ください。
生なる手 —Migrating Hands Endless Horizons—
「生なる手」というタイトルには、人が土地に触れ、手を動かすことから暮らしや文化が始まっていく、そのような思いを込めています。葛尾村は、中世の移住や戦後の開拓など、人々が時代ごとに土地に入り、暮らしを営んできた歴史を持つ村です。その歩みは、常に“手”による切り拓きの積み重ねでした。
2011年の震災や原発事故を経験した葛尾村は、いま「これからどう生きていくか」を問い直す場所になっています。本展では、その歴史や風土に耳を澄ませながら、現代のアーティストたちによる編み物や彫刻といった手仕事から、インスタレーション、写真、VRなどの新しい表現までを交え、「手」と土地、移り変わる暮らしと人との関わりを映し出します。
手は、道具の使用を可能にすることにより、人間を人間たらしめてきた存在です。フランスの哲学者、メルロ=ポンティが語る身体の現象学に照らせば、手は世界との間に生じる関係性そのものを顕在化させることでしょう。現代の身体拡張技術は、ロボット技術による義手義足や感覚インターフェイスなどを通じて「生身と技術の境界」を揺るがし、存在論的に「人間とは何か」という問いを新たに突きつけています。
本事業では、アーティストが地域に滞在し活動することを支援してきました。それは、かつての「入植」に重ね合わせれば、創造を通じた新しい開拓とも言える試みです。農地を拓いてきた人々の営みを引き継ぎつつ、アーティストが活動を通して未来の地平を切り拓いていく。その歩みを「生なる手」として示すことで、私たちが未来を生きるための手の力を、再びイメージすることができればと考えています。
内田聖良 《おおきないしとあかずの蔵》
大川友希 《ほんととその間》
丹治りえ 《土をおこすこと》
永井文仁《ひかりをすくう -Drawing the Light of Katsurao-》
近あづき 《Tactile fo(u)r Commons》
かつらお企画室の記録
参加型インスタレーション作品 近あづき《Tactile fo(u)r Commons》
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葛尾村で、4つの季節を体験しました。
それはあくまで「点」でしたが、匂い、手触り、音は都会のそれよりも印象的で記憶に残るものでした。
このテキスタイルは、その触感をシェアする作品です。
展示会場を見て感じ取った質感を、編み機を使って一緒にニットに編み込んでください。そして、あなたの答え合わせを葛尾村で行ってください。
きっと渋谷では感じられない鮮烈な出会いが待っていますよ。
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*編み機によるテキスタイル制作体験は、下記の日時で可能です。
12/6(土)13:00-18:00
12/11(木)18:00-20:00
12/13(土)13:00-18:00
12/14(日)13:00-18:00