d47 MUSEUMの第36回企画展のテーマは、47都道府県のその土地らしい「デザイン物産」から見る、「工夫のデザイン」です。

2014年に私たちが展覧会「デザイン物産 2014」を開催した際には、現代の暮らしのニーズに合わせて進化させたデザインが注目されました。そこから10年余り経った今、「工夫」や「仕組み」も含めた動きそのものを「デザイン」と捉える時代へと変化しています。言わば、やらざるを得ない状況で、湧き上がるように生まれた「工夫のデザイン」を47都道府県から集め、「物産展」というスタイルでご紹介します。

その土地に当たり前にあり、その土地の個性となっている製品、食べもの、街並、行事、暮らし方、風景‥‥‥。今回ご紹介する47組の方々は、それらがこれからも続いていくために、目に見える部分を飛び越え、さまざまな「工夫」をし、いろいろな人の共感と賛同を得て、地域にじっくりと根を張る「仕組み」に取り組んでいます。

「デザインをするために生まれたデザイン」ではなく「湧き上がるように生まれたデザイン」には、「工夫」という言葉に包括させた、関わる人々の責任感、未来への願い、目の前の自然や人への敬意、共感から始まる仲間づくりなど、力強く、その土地に根を張り続ける思いが存在しています。

日本各地の「デザイン物産」の背景にある47種類の「工夫のデザイン」にぜひご注目ください。

代表的な出展者

耕さないことで生まれる選択肢と、

鳥、虫、人の生きる場所づくり。

秋田 ファームガーデンたそがれ

稲刈りのヘルプスタッフに200人もの応募があったことをきっかけに、田んぼを耕さずに稲を育てる「不耕起栽培」を年間を通して体験する「たそがれ野育園」を開催。機械を使わない「不耕起栽培」を伝えることで、「自分で自分の食べる米をつくれるように」との思いが込められている。2024年には約100人が参加し、年々その輪が広がると同時に、生き物たちが田んぼで生きられる環境が整う。

「たそがれ野育園」の「畑コース」は、参加者たちが一つの畑で協力し作物を育て、保存食をつくる。その中のひとつ「沼山大根のいぶりぬか漬け」は、代表・菊地晃生さんが復活栽培に協力した秋田の在来品種。しっかりと締まった肉質は、漬物に最適だ。

素材も道具もすべて地元産。

奇跡のような登場人物たち。

富山 NAT.BREW

NAT.BREWは彫刻の町で知られる南砺市井波で「土着醸造」を掲げ、その土地の魅力を醸すことに情熱を注ぐブルワリー。醸造家の望月俊祐さんは、ワイン醸造と小規模醸造の技術を使い「その土地・その人だから生まれる文化」を詰め込んだテロワールを感じられる酒づくりを目指す。

「JUNTO」はブルワリーから半径20km圏内でつくる樽を使い、仲間と味をつくったビール。樽の材料のミズナラ、加工する木材店、木樽職人も全て同じ地域にあり、醸造を通して地域循環を楽しくつくろうとする同じ志を持った奇跡のようなメンバーが集合。木彫の町にとっても、木樽づくりにより木工技術の道具や技術が残ることに繋がっている。

植物から材料をつくり、

民具の担い手を増やす。

沖縄 島遊舎かぁらんやー

沖縄県北部の瀬底島で、消えゆく島の暮らしの知恵や精神を、この島の "おじぃおばぁ" の語りから未来へつなぐ夫婦。自ら民具をつくり販売するだけでなく、素材採取から加工まで体験できる民具づくりのワークショップを開催。参加者は、自然の恵みが暮らしの道具へと変わる驚きと、先人の知恵に触れることができる。

島暮らしのありのままを伝えるツアー、自然栽培の薬草を使ったランチを提供する「島の台所Tungah」も、島の文化を五感で伝える試みだ。民具を通して島の多様性に目を向け、道具に宿る意味や暮らしの中での役割、その根源を若い世代に共感できる視点で伝え、「地域文化の担い手」を育み、ともに未来へ残そうと取り組んでいる。

出展者一覧

北海道 SHIRO ／ 青森 Ridun ／ 岩手 縁日 ／ 宮城 桜井こけし ／ 秋田 ファームガーデンたそがれ ／ 山形 エンドー ／ 福島 ぬん〈おやまかな〉 ／ 茨城 鹿嶋パラダイス ／ 栃木 森林ノ牧場 ／ 群馬 ふふふ ／ 埼玉 武蔵ワイナリー ／ 千葉 寺田本家 ／ 東京都 利島農業協同組合 ／ 神奈川 熊澤酒造 ／ 新潟 SUZU GROUP ／ 富山 NAT.BREW ／ 石川 ふくべ鍛冶 ／ 福井 ノカテ ／ 山梨 HERBSTAND ／ 長野 やまとわ ／ 岐阜 ODORIGI ／ 静岡 下山光順〈大中寺〉 ／ 愛知 尾州のカレント ／ 三重 Jikonka ／ 滋賀 ハッピー太郎醸造所 ／ 京都 SHUKA ／ 大阪 御舟かもめ ／ 兵庫 YOKACHORO FOOD BASE ／ 奈良 HEP ／ 和歌山 FROM FARM ／ 鳥取 COCOROSTORE ／ 島根 MASCOS HOTEL ／ 岡山 the continue. ／ 広島 TEA FACTORY GEN ／ 山口 REDD ／ 徳島 フードハブ・プロジェクト ／ 香川 SUNNYSIDE FIELDS ／ 愛媛 柑橘ソムリエ愛媛 ／ 高知 シーベジタブル ／ 福岡 新三郎商店 ／ 佐賀 ナカシマファーム ／ 長崎 オーガニック直売所タネト ／ 熊本 Foreque・喫茶 竹の熊 ／ 大分 やまよし ／ 宮崎 LOCAL BAMBOO ／ 鹿児島 大和桜酒造 ／ 沖縄 島遊舎かぁらんやー

出展品例：宮城｜桜井こけし Reflections、栃木｜森林ノ牧場 発酵バター、群馬｜ふふふ D-pants、岡山｜the continue. # 再生備前シリーズ マグカップ、沖縄｜島遊舎かぁらんやー ソテツ算

会場では出展者の関連商品を多数取り揃えて、ご紹介販売します。商品や入荷情報、受注品のお知らせはSNSで随時発信しています。

AUDIO GUIDANCE

いつでもどこでも 展覧会を声で楽しむ公式音声ガイダンス

47都道府県の出展者をゲストに迎え、活動の紹介や「デザイン物産」の背景にある「工夫」や「仕組み」について、キュレーター・黒江美穂（D&DEPARTMENTディレクター）がお話を伺いました。

展示会場でじっくり聴き込むもよし、移動中や作業中のお供にも。47都道府県の「工夫のデザイン」を音声でもお楽しみください。

エピソードはPodcastで配信中！

▶︎ガイダンスを聴く

9月先行発売開始！ 展覧会公式書籍

47都道府県それぞれの活動にある「工夫のデザイン」が、各地の産業や文化を未来へ繋ぐ大切なヒントになると考え、その背景にある仕組みや視点を紹介します。

【本書の主な構成】

・各地のデザイン物産の背景にある「仕組み」「工夫」を 、イラストとともに解説。

・「日本の原風景を守る農業と、持続可能なコミュニティー」ファームガーデンたそがれ

・「木樽のクラフトビールが仕込む、地域と人の循環」NAT.BREW

・「古い瓦屋根の家が教えてくれた、島の暮らしの知恵を未来に」島遊舎かぁらんやー

・「常滑の土とデザイン。地域の素材が生むものづくりの知恵」高橋孝治（高橋孝治デザイン事務所）

・「よい/好い/良い/善い。よいデザインについて考える」矢島進二（公益財団法人日本デザイン振興会 常務理事）

展覧会会場とネットショップで先行発売中！D&DEPARTMENT各店でも順次販売します。

全国発売日｜10月17日、価格｜2,750円（税込）、編集・出版｜D&DEPARTMENT PROJECT

ネットショップでのご購入はこちらから

2025/9/7（日）開催！

デザイン物産 2025 TALK SHOW

展覧会をさらに深く、さまざまな視点で紐解く、1日限定の連続トークイベントを開催！19名の出展者が実際に集うピッチトークと、ゲストを招いたテーマトークを行います。

詳細・お申し込みはこちらのwebサイトをご覧ください。最新情報はd47 MUSEUM SNSで順次お知らせします。