高校生の頃から僕が折に触れて読み耽った、古代ギリシャの数学者ユークリッド。
彼が著したストイケイアは、気を緩ませると情報に埋もれてしまう現代において、物事を深く洞察するヒントが散りばめられているのだ。
この幾何学原論は数学を研鑽する者のみならず、現代の論理的思考の礎とも言われる。
それは当時、最も影響力のあった数学者ピタゴラスやその弟子、また哲学者プラトンの論理的思考の法則に則ってまとめ上げた原論であり、センスや閃きに頼ることのない圧倒的な論理力をもつ。

現代も当時より遥かに多くの情報が混沌と渦巻いており、その中で「自分」というものをどう表現するのか。それはアイディアや閃きだけではなく、太古の昔から厳然とある人間の根元的な部分を見つめずして輝かせることはできないと僕は思うのだ。