20代前半の若手作家の自主企画展。学んだことを次に生かし、新たな発想を盛り込みながら
挑戦を続けて来たROOM206プロジェクトの最終章
ROOM206とは2023年3月に閉館したアートスペース「3331アーツ千代田」の中にあった貸ギャラリーの名前であり、私たちが初めて自主企画展を行った元教室だった場所です。作家としての最初の一歩を踏み出したそのときの感覚や記憶が、今もなおこのプロジェクトの原点となっています。学生である私たちが展示を重ねることは、制作と発表を往復しながら、自らの表現と向き合い社会とつながる試みそのものでした。2回目のVol.2は人数も9名に増え、同じこの8/CUBE1,2,3で開催しました。
そして今回、3回目にして最後のROOM206を7名と1組の作家で開催します。最終章はこれまでのVol.1,Vol.2を振り返りながら、そこで得た経験や感じたことが静かに反映されています。現代美術史の文脈でたびたび語られる「アートの死」という言葉が、ふと頭をよぎることがあります。資本主義と密接に結びついた現代のアートは、商業的な側面と切り離すことが難しくなっている一方で、「芸術は崇高であるべき」とする価値観も、どこかで今なお私たちを縛っているように感じられます。“アート”と呼ばれる表現や技法が無限に増殖し続けるなかで、かつての価値や意義が失われていくような感覚は、近代以降、繰り返し現れてきました。さらに、アートが本来持っていた批評性や問題提起の機能が薄れ、コンセプトや革新性より交換可能な資産(コモディティ)として扱われる状況、つまりアートのコモディティ化が進むことで、「アートの死」と呼ばれる現象が生まれているのかもしれません。
私たちにとってアートとは、社会や歴史と向き合いながら「表現すること」そのものの意味を問い直す行為です。この絶えず変化し続ける社会の中で、制度や流行、時代の波にのまれそうになりながらも、それでもアートは生きています。「アートの死」は終わりではなく、問い直しの契機です。私たちは今の社会に閉塞感を覚えながらも、そこに確かな希望を見出そうとしています。現代アートとは、つねに「死」を意識しながらも「なお生きている」ことを証明する営みなのかもしれません。
世界がアートの終焉を語ったとしても、それでも私たちは、自らの表現を通じて生き延びていく。
ROOM206 Vol.3 “still alive”、参加作家それぞれの声が交錯する最後の展示にぜひお立ち会いください。これからの私たちの活動も見守っていただけましたら幸いです。
あいろく 葵
2003年 東京都生まれ
2022年多摩美術大学入学
美少女という像を用いて二次元と三次元とのやりとりを行い、独自性を模索する。
制作の中心となっているのは、作家が生み出した美少女キャラクターたちだ。彼女らを生み出すこと、生かすことについて考え、表現を試みている。
市川 慧
2022年 都立総合芸術高校卒業
2022年 東京藝術大学美術学部油画専攻入学
2023年 2月グループ展「ROOM206」 3331アーツ千代田
9月 個展「Tokyo Planetes」銀座蔦屋書店
2024年 7月アートフェア「URBAN BREAK 2024」seoul auctionXより参加 ソウル
9月 個展「fish story」 Gallery TAGBOAT
2025年 3月 グループ展「SHIBUYA STUDIO- Art Sticker 5th Anniversary」PARCO MUSEUM TOKYO
7月 グループ展「EYES」 medel gallery shu
画面の中に西洋絵画の奥行きのある写実的技法と日本の絵画表現における超平面的な表現を共存させた、コラージュを用いたミクストメディアによる独自技法など研究・試作中。
大瀧 七海
多摩美術大学油絵科専攻 非日常的なスケール感と、日常的なモチーフが、独自の世界観を作る
田崎 蟻
2019年 高校生国際美術展 佳作受賞
2023年 東京藝術大学油画科入学
2023年 Gallery美の舎学生選抜展2023最優秀賞受賞
2024年 初個展「あなたの家の地下に棲むものです」
2025年 「田崎 蟻展」銀座 蔦屋書店インフォメーションカウンター前
光と影を用いて、個々人が集まって成り立つ「社会」という共同体の動きや、それによって引き起こされる事象や不条理、生まれる感情などというテーマを元に、主に平面作品を制作。
過去作では裁判傍聴や野生動物保護ボランティアといった取材を主としていたが、最近は自身の生活といったミクロな視点の作品も制作。
檀上 恋
2022年 都立総合芸術高校卒業後、多摩美術大学グラフィックデザイン科入学。現在4年。イラストレーションを中心に作家活動中。
樋熊 あかり
2004年 愛知県生まれ
2023年 東京藝術大学に入学。
展示歴
2023年 「一蓮回廊展」 ヒコヒコギャラリー 銀座
2023年 「藝祭 油画有志展」 東京藝術大学美術学部絵画棟5階 509
2023年 international AAIP Exhibition
2024年 「穴展」 GALLERY33
2024年 「藝祭 油画有志展」 東京藝術大学美術学部絵画棟5階 507
2025年 「PLAY's PASE」 Nine Gallery
2025年 「tagboat Art Fair 2025」東京都立産業貿易センター浜松町館
2025年 「Small Talk」HAGISO 谷中
2025年 「Made in Child」tagboat 人形町
自身が社会で感じたテーマを主に油彩の平面作品として制作している。最近はモチーフとセルフポートレートを組み合わせ感情を表現することに取り組んでいる。
現在、東京藝術大学に在学しながら制作・展示活動を行う。
宮澤 択緒
2003年 東京生まれ
2022年 東京藝術大学美術学部絵画科専攻入学
八木 紬(ANDI)
2003年東京都生まれ。
都立総合芸術高校卒業後、アニメーションスタジオでアシスタントの経験を積む。
「ASHIMA」がWIRED CREATIVE HACK AWARDでヤングクリエイター賞を受賞。
ANDI
ファッションデザイナーである姉の八木華と映像作家である妹の八木紬によるアーティストユニット。