本展は、変化とともに失われゆく渋谷の日常を再提示・共有し、過去と未来をつなぐ機会の創出を目指しています。
100年に一度と言われる渋谷の再開発は、鉄道と街が一体で進められる複雑な変化であり世界中から関心を集めています。一方で、移り変わる建物や風景が人々の記憶から薄らいでゆくなかで、かつての渋谷を惜しむ声も多くあります。本展では、変化の中で、失われゆく風景や日常を記録写真で再提示し、渋谷というまちの記憶を共有する場を創出します。単なる懐古ではなく、地域の変遷や文化を可視化し、今を通じて過去と未来をつなぐ鑑賞体験の提供を目指しています。
今回は「名づけられた渋谷の通り」を切り口にキュレーション。
渋谷にはさまざまな「道」が存在します。谷間にある駅を中心にひろがる道の上では、ひと・もの・ことが行き交い、網目のようになって「通り」として人々に親しまれています。それらの通りの名前は、明確な由来があるものだけではなく、諸説ある場合や、いつの間にかそう呼ばれていた道が少なくありません。渋谷の通りは、それぞれが道の形状だけではない個性を持ち、街の回遊を楽しませてくれています。
今回は、そうした「名づけられた渋谷の通り」というテーマで渋谷駅周辺の写真を収集・分類してアーカイブ化。
暗渠化前の渋谷川、恋文横丁、軒を連ねた映画館、宮益坂を通る路面電車、1円PHSの広告など、
前回展で展示した道玄坂3代目商店主 大西忠保氏の写真に加え、渋谷に関わる方々の協力を得て、
さまざまな視点で撮影された大正・昭和・平成の写真が会場に並びます。
前年同様に各写真の2次元コードからGoogle ストリートビューを通して現在の風景と見比べることができます。
加えて、渋谷にある通りをプロットしたMAP、記録写真と連動した渋谷のタイムラインも展示します。
それらを通して、変わり続ける渋谷の瞬間の“層”を捉えることができるはずです。
アーカイブとは、記録を「保存」するだけでなく、その記録が「継承」され「活用」される一連の流れを支えることです。
『渋谷アーカイブ写真展』は、渋谷の街並みをアーカイブし視覚体系化することにより、記録から渋谷というストーリーを紡ぎ、共有資産として将来へつなぎます。