ZINEを通じた 多様な価値観の交流
ZINE(ジン)とは、個人や小さなグループが、思い思いのテーマで、ひとつひとつ手づくりした雑誌やパンフレット
のこと。商業的な目的がないため、趣味やライフスタイル、アート、音楽、デザイン、建築などのさまざまなテーマを、
文章、写真、イラストなどで自由に表現できるのが魅力です。
『Hand Saw Press 夏のZINE祭り 2025』は、2022年より毎年恒例で開かれているZINEの祭典。ZINEの魅力に惹きつけ
られ、さまざまなテーマで個性溢れるZINEを発行している方たちが、8/に集まりました。
こちらは、北海道札幌市から参加している「TATA PRESS」の有田さん。
ZINE、ポスター、チラシ、カード、ステッカーなどのリソグラフ印刷スタジオを運営し、
デザイナーやイラストレーターたちと共に作品をつくるほか、リソグラフ印刷で制作された作品を販売しています。
リソグラフ印刷では1色ずつ版を重ねて印刷するため、インクの重なりで生まれる微妙な色の重なりが、温かみのある風合いを生み出していて、それも魅力のひとつ。
こちらは、新潟県の長岡造形大学の卒業生たちが中心となって運営しているブックレーベル「コメドコBOOKS」のブース。
中でもとても興味深かったのが、セルフビルドでビル一棟を建てた岡啓輔さんのブース。
一級建築士の岡さんが、20年の歳月をかけて東京都港区につくった「蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)」は
「東京のサグラダ・ファミリア」とも呼ばれ、注目を集めています。建築家でありつつ、現場で構造物をつくる職人的な発想を持ち、耐久年数も長いコンクリートを開発し作られた「蟻鱒鳶ル」ですが、その過程での考えや、建築に携わる仲間の寄稿で構成された『月刊蟻鱒鳶ル売り鱒』、そしてビル建築の記録を掲載した『蟻鱒鳶ル』(筑摩書房)も、ブースで販売されていました。
出版、ZINE、アートブックの制作を行なうアーティストで、ワークショップや展示を通してZINEの魅力を広めています。
今回のイベントでは、ミハウ氏による『印刷されたZineのルネッサンス』と題した、ZINEの歴史や文化的背景などを考察した出版物が日本語訳化されました。
今回の来日でミハウさんが興味を持ったのが、日本の絵文字文化。
絵文字からヒントを得たデザインをドローイングマシーンで複写していく手法でZINEを制作していました。
隣のブースでは、ミハウさんを含め、同じくポーランドのアーティストTogu Riso Press、台湾のMULU OFFICE、日本のPuresu de TokyoによるZINEが展示販売されました。それぞれに、インクの重なりや、それぞれに異る判型、綴じ方や折りたたみ方などの工夫があり、豊かなデザイン性を感じます。
さらに、リソグラフ印刷でカレンダーポスターをつくるワークショップも開催され、実際に手を動かしながら、ものづくりを楽しむ体験に子どもから大人まで参加し賑わいを見せていました。
今や、パソコンで制作し、インターネットで入稿すれば小冊子やポスターなどが完成するなか、制作者の意思によって自由に構成やデザインを考え、印刷する紙を選び、製本して完成したZINEをひとつひとつ手渡しで届けていく。ZINEを通してゆっくりと繋がる人と人とのコミュニケーションには、世代も年代も国境も超えていく力があり、多様な価値観や、さまざまな人が行き交う渋谷、そして文化発信拠点でもある8/らしいイベントとなりました。
●INFORMATION
会 期 2025年7月10日(木)〜 2025年7月15日(火)
場 所 8/COURT、8/CUBE
料 金 入場無料
主 催 Hand Saw Press








