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REPORT

ゴミを含めた 地球環境の循環を考える

コーヒーの仕事がなくなるその前に

2025.5/27-2025.6/1

私たちが暮らしていく上で、必ず出てくる「ゴミ」という存在。一概に「ゴミ」とはいっても、事業用廃棄物や家庭ゴミなど排出されるゴミを削減する活動、リサイクル・リユース活動、マイクロプラスチックや海洋汚染、そしてゴミの焼却などにより放出される温室効果ガスの問題など、さまざまな切り口で焦点を当てることができます。

 

そんな「ゴミ」をコミュニケーションツールに、毎年530日を「ゴミの日」と定義し、その周辺の1週間を、展示やトークイベント、ワークショップなどを通して「ゴミを出さない循環する社会」を提案しているのが社団法人ゴミゼロです。2018年の発足以来、サーキュラーエコノミー(資源の循環利用を重視し、廃棄物を最小限に抑える経済システム)について考えるカンファレンスや、プラスチックについて考えるイベントのほか、アップサイクルな商品開発などにも取り組んでいます。

 

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2025年のゴミの日を含む527日(火)〜61日(日)は、『コーヒーの仕事がなくなるその前に』が、8/COURTにて6日間に渡り開催されました。

 

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こちらが、社団法人ゴミゼロ代表の中村元気さん。2018年に渋谷で、『コーヒーとプラスチックのこれから』というイベントを開催したことを機に、京都、オンラインと場所や手法を変えて、コーヒーから考えるゴミの課題について考える場を企画してきました。

 

「これまではどちらかというと、搾りかすや、プラスチック容器の話など“コーヒーを淹れた後”のゴミの話でした。もちろんそれも大切だと思うのですが、コーヒー業界の方々がさらに興味を持つ、コーヒー産地の話、品種の話、味わいの話などをメインのテーマに、地球環境全体のことを考える機会にしたいと考えました」と今年のテーマについて話します。

 

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期間中は、コーヒー業界がサスティナビリティに取り組む意味や、コーヒー産地における気候変動による影響など、さまざまな専門家やコーヒー業界の方々が登壇する6つのトークショーのほか12のワークショップのプログラムが実施されました。

 

トークイベントの一つ『コーヒー産地で今起きていること」には、気候変動解決に向けたムーブメントの構築、拡大に務めている国際環境NGO 350.org Japan リーダーの荒尾日南子さんをはじめ、毎年エルサルバトルを訪れ生産者との対話を続けながらコーヒー豆の輸出振興に携わっているCOYOTE代表の門川雄輔さん、そしてコーヒーインポーターである株式会社SYUHARI代表の辻本貴弘さんとグリーンバイヤー・横山史門さんが登壇。


今、地球上でおきている気候変動について、そしてコーヒー産地においては気候変動に伴ってどのような変化が訪れているのかが語られました。

 

 

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まずは、荒尾さんの進行のもと、地球温暖化の今について、さまざまなニュースや事例を振り返ります。ここ数年だけを見ても、記録的な暑さが年々更新され、地球はこのままだとどうなってしまうのだろうか……と感じてしまうニュースが続いています。この地球規模の変化は産業革命による機械化が始まり、エネルギーを石油などの鉱物資源に頼るようになって以降、少しずつ変化が生じており、ここ約150年の間では地球の気温は平均1度上がったと言われています。

 

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とても印象的だったのは、気温が1度上昇するという感覚は、人でいうところの平均体温が36度から37度台になるほどの深刻さということ。
気温が1度上がることで、空気が含む最大の水蒸気量(飽和水蒸気量)は約7%増加することになり、その結果、干ばつ、洪水、土砂崩れ、氷河の雪解け…など、さまざまな自然災害が各地で報告されています。地球は平均気温を上げた状態で温室効果ガスをまとい続けているわけですが、それはまさに体温の上がった人が脱げないダウンジャケットを着ている状態に似ているのかもしれません。

 

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そして話は、コーヒー産地における温暖化の影響について、話が続きます。

 

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地球温暖化の影響は、コーヒー産地でも間違いなく表れています。短期間に大量に降る雨の影響により農園の地滑りや、コーヒーの開花時期のずれ、湿度上昇による乾燥の課題、害虫の増加など、さまざまな問題を引き起こしています。そういった環境の中で、より高度な場所に農園を移して栽培する農家や、労働環境の改善、加工工程での工夫など、産地の現状や取り組みなどが紹介されました。

 

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また、期間中数回開催されたワークショップでは、コーヒーの風味や香りを評価するための「カッピング」が行われました。

上記はSHU・HA・RIの辻元さんたちが買い付けている豆を用い、それぞれのコーヒー農家の特徴、生産や加工方法の違いによって表れる、香り、風味の違いを体感するもの。

産地、加工方法、品種などによる、味わいや香りの違いを楽しみながら、それぞれのコーヒーの魅力を知る会となりました。

 

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会場には、1杯のコーヒーがどのような経緯を経て、どのような仕事に支えられて私たちの手元に届くのかを明記したパネル展示も。コーヒー農家や加工業者、輸出・輸入業者、配送業者、焙煎者など、コーヒー業界に関わるさまざまな方の仕事に支えられているなか、サスティナブルな取り組みとしてできることが記されていました。

 

地球温暖化の影響で、コーヒー豆の主要品種であるアラビカ種の栽培に適した土地が2050年までに半減すると言われているなか、美味しいコーヒーが存り続けるために、そしてコーヒー業界の仕事が守られるために、ゴミを含めた地球環境の循環に意識を向けることの大切さを知ったイベントとなりました。

 

●INFORMATION

コーヒーの仕事がなくなるその前に

会 期  2025年5月27日(火) - 2025年6月 1日(日)

時 間  11:00 - 20:00

場 所  8/COURT

主 催  一般社団法人530

協同企画:増田啓輔
協力:東急株式会社,Creative Space 8/

 

 

 

 

 

 

 

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