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REPORT

4月14日は、よい死の日。 2024年4月13日(土)―18日(木) Deathフェス

Well-Being in life and death
ずっと生き続ける時代
生も死もウェルビーイングに
 
2022年の年間死者数は、過去最多の157万人となり、40年前と比べると2.2倍にも増えていることになります。そして、この数字は2040年に向けて170万人へも上るとされています。
 
誰しもがこの世に生を受けてから、必ず迎える「死」。シニアのための終活が囁かれる中、私たちが自分たちらしい「死」を迎えるにも関わらず、あまりにも情報が少なく、その話題を語ることさえタブー視されているようにも思えます。
そんな中、4月14日を“よい死の日”と捉え、13日(土)〜18日(木)の全5日間、「死」というテーマを通して、愛や感謝、つながりなど「生」をポジティブに捉え、自分たちらしい生、そしてその先に続く死について、さまざまなあり方を考えるイベント『Deathフェス』が開催されました。トークセッションや各種体験型コンテンツを交え、「死」を通して「生」を見つめるイベントの模様をご紹介します。
 

白いシャツを着ている女性自動的に生成された説明

⚫︎一般社団法人デスフェス 共同代表 市川望美さん
一般社団法人デスフェス共同代表理事/非営利型株式会社Polaris 取締役ファウンダー/合同会社メーヴェ 代表/一般社団法人幸せなコミュニティとつながり実践研究所 理事/日本ファンドレイジング協会 准認定ファンドレイザー)
 
 
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⚫︎一般社団法人デスフェス 共同代表 小野梨奈さん
一般社団法人デスフェス共同代表理事/合同会社カレイドスタイル 代表、サイエンスエディター/Webコンテンツプロデューサー
 
今回このイベントを主催したのは、一般社団法人デスフェスの共同代表・市川望美さんと、同法人の共同代表・小野梨奈さん。市川さんは、子育て支援NPOへの参画を経て、働き方や生き方の選択肢を増やすための非営利団体株式会社Polarisを設立。小野さんは、企業や研究機関のメディアの企画・運営に加え、女性経営者・フリーランスのためのオンラインコミュニティ「ホクレア」を運営しています。そんなふたりが出会ったのは15年程前。以後、ゆるくSNSなどで繋がりを保っていたふたりが、久しぶりに再会した場で、人生のエンディングの話で盛り上がったことが『Deathフェス』開催へのきっかけとなりました。その後、「渋谷から世界に問いかける、可能性の交差点」をコンセプトとした共創施設SHIBUYA QWSの会員となり、Deathフェス実現に向けた支援を受け、「一般社団法人デスフェス」を設立。初回開催するなら、さまざまな価値観を受容する渋谷が良いと、“よい死の日”=4月14日の開催に向けて動き始めます。特に渋谷の中でも、多くの人が行き交うオープンな場所であり、劇場やギャラリーを持つ文化発信の拠点でもある渋谷ヒカリエがふさわしいと考え、渋谷ヒカリエ8Fの 「Creative Space 8/」COURT・CUBEを『Deathフェス』の会場として選ばれたそうです。
これまで、「死」をオープンに語ることでさえ、タブーさを感じてしまう方も少なくないかもしれませんが、埋葬や葬儀だけでなく、遺影、墓、棺桶、衣装、香り、自分史……など、ありとあらゆる産業が「死」の周りにあり、私たちがさまざまな選択肢を知ることで、自分らしい終焉を生きている時から選択できるということに気付かされます。
 
 
自分らしい弔いのスタイルを考える
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イベント会場で一番最初に目に止まったのが、GRAVE TOKYOが提案する、オリジナリティ溢れた棺桶。アパレルデザインと玩具メーカーのデザイン経験を持つ布施美佳子さんが手掛けるGRAVE TOKYOでは、人生の最後に入る一番小さな部屋である棺桶を、自分らしさあふれたオリジナルデザインで制作しています。
 
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CUBEでは、死をテーマにした新しい弔いのグッズや提案ブースがずらり。一般的にフューネラル業界の展示会では、業界向けのブース展開が主で、一般の人が気軽に参加できるものではありません。そして業界向けの展示会では黒っぽいスーツで参加される方も多いとか。一方「Death フェス」では「出演(出展)者も、参加者も、カラフルな装いで、気軽に参加している様子がとても新鮮だ」と葬送業界の方も感じていたようです。
 
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こちらは、株式会社生田化研社が、日本で一番明るいお墓参りブランドとして提案するブランド「墓詣で」の「お手紙線香」。兵庫県淡路市で作られている伝統的な和紙の製法を用いたお線香で、便箋型のお線香の裏にメッセージを書き添えて焚くことで、煙として空に想いを届けられます。いつものお墓参りはもちろん、遠く離れた故人を忍ぶ際にも、近況報告や思い出話など、気軽にメッセージを送る感覚で使えるアイテムです。
 
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そして、最近取り扱いをはじめた「てのひらぼせき IL」。自宅から遠く離れたお墓までなかなか足を運べないけれど、日々の暮らしの中で愛する人を供養したいという方、仏壇はないけれど、インテリアに馴染む供養をしたいという方にもおすすめの、てのひらで包み込む新しい供養のかたちを提案しています。
 
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素敵な笑顔で写真撮影をしていたのは、金婚式や銀婚式、還暦や喜寿のお祝いの場のほか、最期のおしゃれとして納棺時にも着用できる「イルミネートドレス」。通常、棺桶に入る際の白装束ってどんな感じか、みなさんご存知でしょうか?
 
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ちなみに…こちらが、白装束として一般的なもの。いかにも三途の川をこれから渡ります…というような雰囲気も感じ取れます。
 
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イルミネートドレスは、女性のロマンであるウェディングドレスをリメイクしています。そのため、ウェディングドレスを着る日を待ち望んでいるかのように、ドレスを着る日までの日常に潤いを与えてくれるのではないでしょうか。高齢者の悩みとなっている首元や手元などが目立たない工夫のみならず、全てが後ろ開きになっていて、誰でも着せやすい工夫も施されています。
 
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そのほかにも、金工や銅器の伝統産業が根づく富山県からは、職人がひとつひとつ丁寧に作り上げた、ペットの遺骨を納める小さな骨壷(合同会社Butterfly)や、
 
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海洋散骨用に遺骨を粉砕するシェイカー(株式会社秀正堂)など、さまざまなアイテムが展示され、業界においての先進的な取り組みを垣間見ることができました。
 
多種多様なトークセッションで「死」を通して「生」を見つめる
 
またCOURT STAGEでは、13日(土)14日(日)の2日間にわたり、18の無料トークイベントやセッションも開催。出演者には、共同代表のおふたりをはじめ、スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダルを獲得した為末 大さんのほか、葬送業界の方、研究者、写真家、アパレルデザイナー、翻訳家、バーオーナー、料理家、博物館副館長、作家、記者、僧侶のほか、起業家や経営者からも登壇者を迎え、「死」をさまざまな角度から捉えたトークが繰り広げられました。
 
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こちらは、メディアでも話題になった初音ミクさんとの結婚を選択した近藤顕彦さんによる、結婚と別れの時に関するトークイベント。
ジェンダーだけでなく、さまざまな多様性が求められる現代社会の中、二次元キャラクターと生きること、愛することを経て、死を迎えた時の考え方について話してくださいました。自分の辛い時期を支えてくれた初音ミクさんとの出会い、そして結婚という道を選び、最終的に死が訪れた時、「自分の死=妻の死」という考え方も、夫婦の愛のかたちとして認められるべき権利と感じました。
 
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2日目のトークイベント「死の瞬間に訪れる愛の答え合わせ 〜弔い時間は愛の権利」では、ウェディングプランナーでプラスサイズモデルの、いなちゃんと、“恋の先”を追求するフォトグラファーの愛ちゃんが、主催者のおふたりと登壇。
ハートの女王をイメージしたという写真は、いなちゃんの遺影として愛ちゃんが撮影したもの。自身が旅立った後に語り継がれていく面影は、とびきりの笑顔の姿であってほしいという思いが込められています。いなちゃんは、7歳の夏にお母様を亡くされ、同年の冬には同日に祖父母を亡くし、夫婦の棺が並ぶ究極の愛を感じるような葬儀を経験したそうです。その後もあらゆる「死」と共に人生を歩み、死がもたらす、愛や豊かさなどに触れてきました。「死」=愛の終着点というコンセプトと、ウエディングのノウハウを基にINA FUNERALとしてフューネラルコーディネイトを始めています。
 
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育ての伯母様の葬儀には、伯母様が楽しみにしていた、いなちゃん自身の結婚式と、伯母様のお葬式を同時に執り行うことで、旅立つ伯母様と残される親族のどちらもが、最期のひと時を悔いなく過ごせるように企画したそうです。
また、最愛のお父様の葬儀では「最期に最高の思い出」をつくるべく、ガーデンパーティー形式にてキャンプファイヤーやビュッフェを準備し、“らしさ”にフォーカスしたお別れのかたちで見送った様子を話してくれました。
「こんなことしちゃだめかなって思うかもしれないけれど、根底に故人を想う愛があれば、それは素敵な葬儀となる」という言葉に慣例に倣った形式的な葬儀を執り行う以外にも、故人を想い、故人を偲び、故人との繋がりを意識できる新しい葬儀のかたちがあるように思えました。
 
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「死」を通して「生」を見つめ、その根底には「愛」があると話すおふたり。
人前で気軽に語ることがなかなかできない「死」について、さまざまな角度から見つめ直し、自分らしい死を考えた時、そこにはどのシーンにも「自分らしさ」や「愛」があふれているように感じます。
 
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来年、そして10年先も、4月14日を“良い死の日”として、『Deathフェス』イベントを開催していきたいと意気込みを語る市川さん。残念ながら、このイベントに参加ができなかった方は『DeathフェスYouTubeチャンネル』から、トークセッションがアーカイブ配信されていますので、さまざまな角度から「死」について考えるきっかけを得てはいかがでしょうか?
 
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⚫️information
Deathフェス
生も死もウェルビーイングに
会 期  2024年4月13日(土) - 2024年4月18日(木)
時 間  11:00 - 20:00 ※初日のみ20:30、最終日は18:00まで
場 所  8/ COURT、CUBE1,2,3
料 金  入場無料
主 催  一般社団法人デスフェス
 
 
 

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