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06/d47 SHOKUDO

「d school わかりやすいネルドリップ珈琲」レポート

 

9月1日(月)、8/CORTにて「d school わかりやすいネルドリップ珈琲」を開催しました。

 

当日の様子をレポートします。

 

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福岡「珈琲美美」の森光宗男氏、昨年に惜しまれつつ閉店した青山の名店「大坊珈琲店」の大坊勝次氏、同じく東京「Daphne」の桜井美佐子氏、岐阜「待夢珈琲」の今井利夫氏、京都「オオヤコーヒ焙煎所」のオオヤミノル氏の5名の講師をお招きし、エスプレッソやサイフォンなど、数ある珈琲抽出法の中から、日本独自の発展を遂げる「ネルドリップ」についての勉強会を開きました。

 

 

ネルドリップのネルはフランネル、もしくはリンネルの略語。柔らかい起毛の生地で作られた布製のフィルターを使う珈琲の抽出方法を、一般的にネルドリップといいます。

 

 

若い方の間ではあまり一般的ではないかもしれませんが、お手入れや抽出に少しだけコツや手間が要る反面、他の抽出方法に比べて香りがよい、雑味が少ないなど、多くの利点があります。

 

 

「家庭で気軽に毎日美味しいネルドリップを淹れてほしい」。これが今回のd schoolの大きなテーマです。

 

 

 

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「珈琲が健康によいのではなくて、よい珈琲を飲むことが大事」。

 

ズパッとした切り口から始まった岡希太郎先生による講演「珈琲と健康とネルドリップ」。

岡先生は東京薬科大学の名誉教授で、コーヒーと健康の関係を独自に研究されておられます。

 

 

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グラフや図説を使い、抽出法の違いで成分が変わる説明をする岡先生。数値で明らかな差が出る事で、聴講する方々のうなずきも深いです。

 

 

「よくカフェインが悪者にされがちなんだけど、もっと体に悪い成分がある。それがオイルと滓(かす)」。

 

「悪い成分を上手く漉して美味しくいただける良い方法がネルドリップなんですよ」。

 

 

コーヒーの香りには500以上の成分が入っていて、そのほとんどが解明されていないという事に驚きました。バターやキャラメルから、土の匂いなどフェロモンとなる香り、中には猫という匂いもあり、良い香りはその成分量によって決まるそうです。

 

 

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そんなお話の間に、東南アジアで昔からある木綿の靴下(もちろん未使用!)で淹れるソックコーヒーを紹介する茶目っ気たっぷりの岡先生です。

 

 

続いてd travel誌の福岡号で紹介させていただいた、福岡の老舗「珈琲美美」のマスター森光宗男さんによるネルドリップ講座が始まりました。森光さんは40年前に今はなき東京吉祥寺「もか」で修行の後、現在日本のネルドリップ第一人者として活躍される方です。

 

 

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1800年代にフランスで発明されたネルドリップの歴史に始まり、使用器具、実際の淹れ方、ネルの交換時期の見極めなど、みなさんの真剣にメモを取る姿が目立ちます。

 

 

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「毎回フィルターを使い捨てるような事は僕らの時代で変えなきゃいけないんじゃないか」

 

世界中で新しいコーヒー文化が生まれる中、ネルドリップが現代にどういう意味を見い出すのか、未来を考える森光さんの言葉に心を掴まれました。

 

その後お二人への質問コーナーでは、ネルの保存方法からプロの方からの専門的な疑問まで、沢山の声が上がりました。

 

 

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参加者に混じって、講師のオオヤミノルさんがブースから岡先生へ質問する一幕。

 

 

続いて各講師が目の前で淹れたネルドリップ珈琲を実際に飲んでいただきます。

 

 

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特製の大型ネルでドリップする森光さん。

わずか30分の間に60人の珈琲を淹れる大作業にも関わらず、ドッシリと構える森光さんがとても頼もしい。

 

 

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静かに黙々と、毎回変わらぬ姿勢でドリップを繰り返す大坊さん。

ネルドリップでは細い湯を一定の速度で注ぐため、肘の角度の調節が重要なの

ですが、40年近く毎日その動作を続けてきた大坊さんの姿には思わず息を呑

みました。「大坊珈琲店が蘇る!」と言わんばかりに、周りをとり囲む皆さん

の視線がひと際熱く感じるブースです。

 

 

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大坊さんの隣で身振り手振りを交え、にこやかにお客さんと会話をどんどん

弾ませるオオヤさん。静と動のお二人の姿が本当に対照的で、同じ珈琲を淹れ

ているのかと思うと何だか不思議な気持ちになりました。京都弁で親しみやす

く話すオオヤさんの独特の空気に引き込まれます。

 

 

「一人一人がそれぞれの島をもっているよう」

 

 

会場からはそんな声が聞こえてきました。

たしかに同じネルドリップなのに、それぞれ使う器具も淹れ方も全く異なり、

島を渡り歩くように参加者は各講師のテーブルをグルグル巡ります。

 

 

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続いて実際に参加者がネルドリップを淹れていただく第2部に入りました。

 

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文字通り手取り教える桜井さん。

 

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今回のために、ご自身が収集された様々なお店のネルをお持ちいただくなど、豊かな見識と情熱から、実際に珈琲を生業とされる方の質問が集まります。平織りや綾織りなど、ネルの織り方によっても抽出に差が出る、といった専門的な話にプロの方も感心されていました。

 

 

今井さん講習.jpg

 

蝶ネクタイがトレードマークの今井さんのブースには、終わった後も参加された方からの質問が途絶えず、最後の最後まで丁寧に答える姿がとても誠実でした。

 

 

大坊さん講習.jpg

 

 

講習風景.jpg

 

講師、参加者問わず、みなさんの熱気がとにかくスゴい!!珈琲がほんとうに大好きで、もっともっと学びたいという姿勢があちこちに見えてきて、しきりに感動してしまいました。

 

 

 

今回のイベントで最も印象に残ったのが、オオヤさんがふと口にした「着古したフランネルを裁断して自分でネルを作って実際にドリップしてみるのが1番イイですよ」という言葉。

 

 

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「日々の生活の中でどういう仕組みでこのコーヒーが出来るのか、自分の目で観察しながら自然と理解できるようになりますから」

 

何気ない会話だったのでしょうが、今回のd schoolの大きなテーマ「家庭で毎日ネルドリップを楽しむ」という事への一つの回答なのではないか、ふとそんな気がして、自然と参加者と講師の間でそういった対話が生まれた事がとても嬉しく思えました。

 

 

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その後、参加されたみなさんはネルドリップの淹れ方に変化は出てきましたでしょうか?私はネルを浸す水を毎日替える、という最も初歩的な事を何とか欠かさずに出来るようになりました(笑)。

 

 

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最後にお忙しい中、ご参加下さったみなさま、本当にありがとうございました!

これからもご家庭でネルドリップ珈琲を楽しく淹れて、良い時間を沢山作ってくださいね!

 

 

この度イベントをコーディーネイトしていただいた繁田さんがご自身のお店カフェ・ド・カルモのブログで今回のイベントのレポートをアップされています。そちらも併せて是非ご覧ください!

 

 

(d47食堂 藤田洋祐)