Hikarie

SHIBUYA WANDERING CRAFT 2017 ECO

8.3 thu - 8.29 tue 11:00-20:00 入場無料

② エコアドベンチャーな活動家たちのトーク&ワークショップ

エコアドベンチャー展 トークセッション①

8月5日、COURTで、環境にも人にも社会にも良いライフスタイルを、楽しみながら冒険的に実践している人たちを紹介するトークセッションが開催されました。登壇者は、塩づくりをしながら、大隅半島で暮らす高橋素晴さん。「自然と暮らしをつなぐ」をキーワードに、これまで鶏の解体や火起こし、田舎暮らし、建築、無人島ツアーなど、さまざまなワークショップを開催してきたそうです。トークショーでは、子供時代を振り返りながら、今までの道のりや現在の暮らしぶりについて語って下さいました。
高橋素晴(たかはし・すばる)
14歳のときに、ヨットで太平洋を横断。その後、暮らしにまつわるあらゆることを学び、26歳で塩づくりの会社を立ち上げる。「暮らしも仕事も作る塾」主宰。

親になってみて、送り出す側の勇気もあるんだなと思った

11歳のときに一人でキャンプをしたり、新潟県を自転車で一周した高橋さん。冒険家の気質は生まれつきのようです。14歳のときに、世界最年少で太平洋をヨットで横断したことでご存知の方も多いかもしれませんね。「一人で遠くに行くのが好きで。僕自身は冒険という意識はなかったんです。夏の太平洋って穏やかなんですよ。好きな海でずっと過ごせる…ほぼ、バカンスですね(笑) 親になってみて、送り出す側の勇気もあるんだなと思いました」(高橋さん)

暮らしにまつわるあらゆることを学んだ20代

20歳のときに大学進学のために九州へ。「将来的に自然学校のような、自然に近い仕事をしたいと思って、学生時代からそういった活動に参加したんです。サラリーマンを経験して自分で学びの場をつくろうとしたときに、(僕の考える)自然学校とは違うなと思って」。現場で必要とされるのは、リスクマネジメントや誰でもできるようなプログラム化。自然と関わっていくなかで子どもたちが壁にぶち当たり、学びを得ることを本来の目的と考える高橋さんにとって、方向性が違うと実感したそうです。そこで、ご自身がより生産的で実践的なことをしながら、いずれ学びの場をつくろうと決意。農業、建築、醸造、素潜り、狩猟、イベントやコミュニティづくりなど、暮らしにまつわるあらゆることに挑戦し、辿り着いたのは塩づくりでした。

よりカジュアルに、当たり前に自然な塩が食卓に並ぶ未来

たくさんの文献を当たって学んだのち、26歳のときに塩づくりの会社を起業。「南九州の海がすごくきれいで。海と関わって生きていけたらいいなと思いました。塩は、あらゆる生物に必要なもので、世代を超えてつくられてきたもの。そこに恰好良さを感じたんです」。もともと全国の沿岸部でつくられていたものなのに、国の定めた専売制*によって一時的に自由につくれなくなったことがあり、以前のミネラルたっぷりの自然な塩を取り戻そうという気持ちもあったそうです。高橋さんが思い描くのは、よりカジュアルに、当たり前に自然な塩が食卓に並ぶ未来。「塩は、食材を活かすもの。本当の旬の素材は持ち味が濃いので、それに負けないインパクトのある塩をつくりたいですね」(高橋さん)。

子どもたちのやる気がすごい! 無人島合宿

塩づくりの会社設立と同時に、自然体験のワークショップもスタートさせた高橋さん。食育や火おこし、中でも、「無人島合宿」のプログラムが好評だったそうです。「鹿児島に、最寄りの港から15分で行ける行きつけの無人島があって。無人島ではめずらしく水が沸いていて、魚も多いのでキャンプにぴったりなんです。大人はもともと無人島に何かしらロマンを抱いてやってくる人が多いのですが、子どもたちのやる気がすごい。普通のキャンプでは、主体的に動こうとするまで1日かかるんですが、無人島で魚を銛で突くんだ!と、やる気満々(笑)」。

「自給自足」は、みんなで協力してつくり上げるシステム

20代は、自分で暮らしを立てるためにあらゆることを学び、30代からは人に伝えていきたいという高橋さん。「これまでの経験を活かして、仕事も暮らしも自分たちの手でつくって行くための、大人向けの学びの場をつくりたいですね」。現在は、自給的に塩をつくろうという人に窯や海水を提供し、1年間一緒に作業をしながら応援しているそうです。「「自給自足」の本当の意味は、一人ではなく、みんなで協力してつくり上げるシステム。東日本大震災が起きたとき、(電力や食品など、既存のシステムに)依存度の高い暮らしをしていると、どうにもならないことを実感したはずです。完全に(世の中から)脱却せずに、エネルギーも医療も、レジャーも、すべてのシステムで自立していく。それが最先端の生き方になると思います」と、締めくくって下さいました。
専売制*
塩のより安定した供給と安価を目指し、販売の自由化を禁じる制度。2002年より、再び自由化された。

ワークショップ①(8/5)

同日、COURTで開催されたワークショップ「竹のスタードームを作ろう」を見学しました。講師は、トークセッションで楽しいお話を聞かせて下さった高橋素晴さん。「10年ぐらい前からマイブーム」という丸竹を使って、半球型のドームのつくり方を教えてくれました。

スタードームづくり

少ない材料で簡単に、竹のしなる性質を活かして最大限の空間をつくり出すスタードーム。5m弱の丸竹6本から、大人が10人ほどくつろげる円周12mの半球型のドームをつくります。当日の参加者は5人。みなさん、高橋さんの指導のもと、黙々と手を動かしていました。出来上がりまでのプロセスを、写真で追いかけます。
  • 丸竹を割り、ヒゴにして、長短2種類の長さにカットする
  • 長いヒゴと短いヒゴを継いで、1本のヒゴにする。継ぎ目に穴をあけ、ひもを通して固定する
  • 2のヒゴで輪をつくる。土俵のようですね。
  • トップに星形、サイドに五角形ができるよう、ヒゴを組み合わせる。重なりが交互に、上下になるよう組むのがポイント。難しそう!
  • 輪に適宜穴をあけ、ゆるめにひもでとめたら、中央が膨らむように持ち上げる
  • 形が決まったら、ヒゴを輪に固定させ、強度を高めるために斜めに長いヒゴを渡す
  • 完成したスタードームは、会期中、オブジェとして展示されています。ぜひ、スタードームの中に入って、天井を見上げてみて下さい。意外なほどゆったりとした空間に驚かれるかもしれません。

ミニチュアドームづくり

高橋さんの指導のもと、夢中でつくったスタードーム。これまでの構造を理解するために、60cmのヒゴを使って、直径40㎝、高さ20㎝のミニチュアドームをつくりながら総復習しました。2度目の作業とはいえ、プロセス4の組み合わせ方が難しい様子。完成後、解体して持ち帰ることもできますが、解体するのがもったいない…という方がほとんどでした。

エコアドベンチャー展 トークセッション②

8月5日、午後にCOURTで開催された2本目のトークセッション。登壇するのは、高知県佐川町に、最先端のデジタルファブリケーション工房「さかわ発明ラボ」を設置したissue+design代表の筧裕介さんと森川好美さん。筧さんが近年の実例を、ラボを運営する森川さんが、ラボの様子や佐川町での暮らしについて語って下さいました。
筧 裕介(かけい・ゆうすけ)
issue+design 代表。東京大学大学院工学系研究科修了(工学博士)。2008年issue+designを設立。以降、社会課題解決のためのデザイン領域の研究、実践に取り組む。
森川好美(もりかわ・このみ)
さかわ発明ラボ運営スタッフ。慶應義塾大学SFC卒。学内のデジタル・ファブリケーションのラボを経て、さかわ発明ラボに参画。日々、ラボを訪れる人々のものづくりをサポートしている。
佐川町がどんなところか知ってもらおう!と、まずはまちの動画からスタート。美しい朝焼けやそこで暮らす人々の姿が、スクリーンに生き生きと映し出されました。

自伐型林業の導入に取り組みながら、楽しい試みを

前半は、issue+design 代表の筧さんが、「まじめに、おもしろく、ものづくり」をコンセプトに、日々デザインの力でどんな地域課題に取り組んでいるのかを、実例をもとに紹介して下さいました。
たとえば、住民によるベンチづくり。根底にあるテーマは、町の面積の約70%を占める森林に自伐型林業*を導入することです。持続的に森林を守り、雇用を増やし、その木材を活用してどう産業を生むか。「春はこのあたりの桜がきれいなんだよね」なんて言いながら、参加者全員でベンチを設置する場所を考え、段ボールで模型をつくり、木材を切り出して完成させていくプロセスは、問題解決に挑む!というより、お散歩のようでとても楽しそうでした。その他、小学校の授業の一環で、建築の端材や植物を活用したロボットづくりを通してプログラミングも学んでしまおう!という画期的な取り組みも紹介されました。
自伐型林業*
採算性と環境保全を両立する持続的な森林経営

出来上がった瞬間、(作り手の)顔が輝く

後半は、「さかわ発明ラボ」の運営スタッフ・森川さんが、なぜデジタルファブリケーションに興味を持ったのか、ご自身の経験も交えて語って下さいました。「iMacを愛用し、先生はgoogle」という森川さん。Photoshopで絵を描いてはWebに投稿したり、YouTubeに動画をアップしながら、自然とデザインやプログラミングに興味を持ったそうです。大学在学中、デジタルファブリケーションに出会い、夢中になったのだそう。3Dプリンタやレーザーカッターを活用してさまざまなものをつくりながら学内のラボのスタッフを務め、縁あって「さかわ発明ラボ」へ入社。佐川町へ移住したのです。
ラボは小学校から徒歩10分の場所にあり、無料で開放しているので、子どもたちが放課後に立ち寄っては思い思いのものをつくり、学び合う場になっているのだそう。「出来上がった瞬間、(作り手の)顔が輝くんです。私自身そうでしたが、自分のためにつくっていたものを、だんだん顔の見える相手に向けてつくるようになるんです」。このラボから、未来の発明家が生まれる日が楽しみですね。

エコアドベンチャー展 ワークショップ② (8/5)

トークセッションの後、発明を体感できるワークショップを開催。佐川町出身の植物学者・牧野富太郎博士にちなんだ山野草の型を用いて、ストラップづくりが始まりました。

光る山野草ストラップづくり

たまたま通りかかって親子で参加されたというSさん。日ごろはモノづくりをする機会がないそうですが、パパと一緒に型に沿ってフェルトをカットし、黙々と手を動かすうち……「できた!」とかわいらしい声が。その手には、ヒメフウロという山野草をモチーフにした紫色のストラップが握られていました。中には、敢えて型を使わずに細かなあじさいの花弁を切り抜く女の子の姿も。子どもたちの可能性は、無限にふくらんでいくのでした。

【CUBE1】 とり展 〜鳥居由佳の恋する丸太プロジェクト〜

きれいな海で泳ぐのが好きで、沖縄の竹富島を何度も訪れるうちに、「大好きなこの海を守るために、私にできることは何やろうか」と自問した鳥居さん。山をつくり、育てることがきれいな水を生み出すシステムだと気付き、林業の世界へ。森林ボランティア、全国の林業を営む仲間との出会いを経て奈良県吉野村へ移住。林業家に話を聞きながら、独学で林業の道をひた走ります。
2014年には、自ら原木の丸太を購入。樹齢120年の吉野ヒノキ「ピーコ」が、椅子になって展示されています。20日(日)13:00~のトークセッションに登壇されますが、「たくさんの方たちとお話ししたい!」と、会期中はCUBEにいらっしゃることも多いそうです。お見かけしたら、ぜひ話しかけてみて下さいね。
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