Hikarie

SHIBUYA WANDERING CRAFT 2017 ECO

8.3 thu - 8.29 tue 11:00-20:00 入場無料

⑥ エコアドベンチャーな活動家たちのトーク

エコアドベンチャー展 トークセッション③

8月19日、COURTでトークセッションが開催されました。登壇者は、環境について考える媒体として常にリードし続ける『ソトコト』編集長の指出一正さん、生まれ育った秋田の山菜を山の名人とともに届ける栗山奈津子さん、島根県で米粉を加工した「玄米麺」の生産・販売などを手がける小倉綾子さん。環境にまつわるトピックスを振り返りながら、エコアドベンチャー展を総括するにふさわしい内容となりました。ボリュームがありますが、ぜひ、最後までお読みいただけるとうれしいです。
指出 一正 (さしで・かずまさ)
株式会社木楽舎取締役編集長。山と渓谷社のアウトドア雑誌の編集部を経て、月刊『ソトコト』編集部へ。編集長を務めながら、長野市のWEBメディア『ナガラボ』の編集長、高知県の文化広報誌『とさぶし』の県外編集委員、島根県のソーシャル人材育成講座「しまコトアカデミー」のメイン講師をはじめ、幅広く活躍中。
栗山 奈津子(くりやま・なつこ)
株式会社あきた森の宅配便代表取締役。子どもの頃から秋田の自然に親しみ、進学・食品会社を経てUターン。60~80代の山の名人たちとともに、生まれ育った町から山菜を届けている。環境省主催「Good LIFE AWARD」受賞。
小倉 綾子(おぐら・あやこ)
フードクリエーター。合同会社宮内舎を運営。フェアトレードの会社での勤務を経てUターン。食の選択肢を増やすため、島根県の耕作放棄地を耕しながらグルテンフリーの玄米麺をつくる。全国で50店舗の取引がある。
『ソトコト』に登場されたことがある栗山さん、小倉さん。3人がお顔を合わせるのは、今回がはじめて。まずは、指出さんご自身のご経験と活動を通して、環境の視点で’90年代からアーカイヴ。今、どんな時代を迎えているのかを解説して下さいました。

5cmの世界で地域の宝物に気付くことが、その土地の解像度を上げていく

週2日は東京で、残り5日は地方へ出向く指出さん。月刊誌『ソトコト』の編集長を務める傍ら、ご自身を”レンタル編集長”と名付け、中山間地域で未来への取り組みをしている人や地方都市の街づくりに専心する人たちを取材したり、トークイベントでプレーヤーがどんな思いで事業をはじめたのかを紹介するファシリテーターをしているそうです。
「東京が光り輝いていた90年代、僕だけじゃなくて社会の気分が東京に褒められたい、認められたいと錯覚してたんじゃないかと思います」と、指出さん。釣りや山登りをこよなく愛するため、大学時代からアルバイトで山と渓谷社の『OUTDOOR』編集部に入り、2004年、『ソトコト』編集部へ。当時は、名古屋で開かれた「愛・地球博」をきっかけに環境への追い風が吹いていたものの、現在のように仕事と環境と社会とをバランスよく確立できる実践者が少なかったと振り返ります。「『ソトコト』を考えるときに大事な視点が、ガリガリ君と同じぐらいの容積で物事を見ること。たとえば、これはいつも僕が持ち歩いているポケット水槽で、中には5cmぐらいのヤリタナゴという魚が入っています。滋賀県湖北の、琵琶湖に流れ込む小さな水路で釣った魚。足元にある5cmの世界で地域の宝物に気付くことが、その土地の解像度を上げていくんです」(指出さん)。

内向きの発信こそ、面白い

長野市ではWEBメディア「ナガラボ」の編集長を、土佐では文化広報誌『とさぶし』の県外編集員を務める指出さん。『とさぶし』は、若い人たちが都市部へ流出する中、県の若い職員の方が、地元を誇りに思えるようなメディアをつくりたい、と創刊。「まず、坂本龍馬やカツオのたたき、桂浜に頼るのをやめよう、と提案しました。古典的なものに頼れば楽だけど、前には進まないので」(指出さん)。高知の魅力は、今、どこにあるのかを探った結果、辿りついたひとつがウツボの特集。「太いウツボが5~6匹、洗濯機の中でぐるぐる回っているイラストからはじまるんです。高知といえば皿鉢(さわち)料理。大勢の人で、豪快に呑むのが文化。そんなときに、手っ取り早くヌルをとるために洗濯機でまわすんです」(指出さん)。
地域を発信するときに、陥りやすいのが、前に発信しているつもりで横向きに発信してしまうこと、と指出さん。「うどんで有名な香川県や阿波踊りで有名な徳島県を意識して、高知県なら坂本龍馬…と、横向きに牽制球を投げるお金や時間があるなら、徹底的に県内の人たちの面白いことを探すのが先。それを“内向き”の発信といってます」(指出さん)。『とさぶし』では、地元のスーパーマーケットの陳列棚の特集など、地味だけどきらりと光るネタを取り上げているそう。それを読んで共感した地元のスーパーのお惣菜担当の男の子やNPOに関わっている女の子が、「編集委員になりたい」と手を挙げたそうです。「今では10~20人の若い方々が参加してくれています。内向きに発信したからこそ、できたんですね」(指出さん)

本当にこの町が好きだと思ってくれる関係性を築く

指出さんが手がけた書籍『僕たちは島で、未来を見ることにした』には、財政破綻まっしぐらといわれた島根県・海士町(あまちょう)に移住した若者たちの冒険起業譚が紹介されています。「若い移住者のみなさんが、島にある漁業やお祭り、人と人とのつながりを、すべて教育の視点から見てみようという会社をつくったんです。地元のおばあちゃんや漁師のおじいちゃんたちが先生になって、研修に来た大企業のみなさんに、『豊かさ』について学び、考えてもらう仕組みなんです」。これはひとつのエコシステム、と指出さん。
指出さんが講師を務める「しまコトアカデミー」は、自然資本が豊かな島根県で、東京や大阪にいる若い人たちが、どう地域と関わっていったらいいかを考えるソーシャル人材育成講座。「地域はおもしろいって、思ってもらうためのお手伝いをしています。島根県が移住・定住の枠を外した政策を打ち出して。6か月間の講座なので、本当にこの地域が好きだと思ってくれる関係性を築くことができるんです」と、指出さん。今年で6年目、講座は6期目に入り、これまでに20名がUIターン*したそうです。
UIターン*
都心で就職し、生まれ育った場所に別の職場を求め、戻って転職すること
『僕たちは、島で未来を見ることにした』(木楽舎・刊)

関係性を買う時代に

広島県の「さとやま未来博」の総合監修を手がけている指出さん。廃校となった学校3校のリノベーションの監修を隈健吾さんが担当し、東京大学や広島県内の大学の学生や地元の方とともに進めているそうです。クラウドファンディングをしたところ、目標額の3000万円を上回る3800万円を達成。なぜ、こんなにも集まったのでしょうか? 「’80~’90年代はものを買うためにお金を使い、’90~2010年ぐらいまでは、野菜ソムリエになる、「死ぬまでに行きたい絶景」を見に行くなど、資格や体験、経験にお金を使う時代に。2017年の今、何にお金を払っているかというと、関係性。栗山さんの「森の宅配便」に申し込む方は、山菜も大好きだけど、たぶん関係性にお金を払っているんですよね。クラウドファンディングは、まさに関係性をお金で買う例。そういう世代が増えているのかなって思います」(指出さん)。

体験が、関係性を生む

環境をテーマに、雑誌『ソトコト』が創刊されたのは1999年。2004年の入社時、編集部では「これからロハスが来る!」といわれていて、指出さんは本拠地のコロラドで開催されるロハス会議に定期的に参加し、紹介していました。2008年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災をきっかけに、時代の流れが変わったことを察知。「ロハスは、自分にとって快適で、地球にやさしいスタイル。日本語の紹介では肝心な自分の周りの人やコミュニティが欠落して定着してしまったんです。今に当てはまらないなと思って、僕が編集長になってから、ソーシャル&エコ・マガジンというタイトルでモデルチェンジしました」(指出さん)。
方向転換は、表紙に如実に表れました。「最高のアートディレクター、写真家、素材とともに、インテリア雑誌のようにきれいなものを作っていましたが、ひとつもリアルがないなと気付いて」(指出さん)。現在は、土地の素顔が感じられる場所で、そこに集う人たちを真ん中に置いて。1枚の写真に、関係性を閉じ込めているそうです。
(左)2004年4月号の表紙 (右)2016年3月号の表紙

地域の魅力を再発見する時代から、編集する時代に

みんなで丁寧に地域の魅力を発見した結果、美しい棚田がある、おいしい水や野菜がある、空気がきれい、人がやさしい…と、要素が似ていて差別化しにくくなってしまった、と指出さん。「地域のよいところを再編集する時代になりました。編集の視点では、物事に順番をつけて見せていく、広げていく、減らしていくんです。たとえば、食欲の秋だからごはんの特集をつくろう、とか。地域にそんなスキルを持っている人たちが増えたら、こんなに面白いことはないですよね」(指出さん)。
その好例が、山形県の住民7000人の町・朝日町に移住し、地域おこしのサポート会社を運営する佐藤恒平さん。佐藤さんは、まず、公認のゆるキャラになりたい「桃色ウサヒ」という設定で、ウサギの着ぐるみを着て町を歩いたそうです。それを見て町のイメージに不安を抱いた女性が「うちはリンゴが有名だから」と、手作りのリンゴ型のポーチをプレゼント。呆れたおじいさんが「背中にせめて朝日町とでっかく書いておけ!」と、白い大きなタグをつけてくれたそうです。「ウサヒを構うことで町づくりにつながっていく。これは、地域の編集なんだなって思うわけです」と、指出さん。

“関わりしろ”があった方がいい

その後、まちの文房具屋さんがパイロット製のピンク色のボールペンにウサヒをプリントして貼って販売したところ、5000本もの売り上げが。中には夜行バスに乗って買いにくる人までいたそうです。あまりに売れたので、パイロット社の方が御礼に訪れて。さらには、小学生たちがウサヒを連れて新庄市のマーケットへりんごを持って出かけ、見事に売ったそうです。「日常の中で当たり前にあるものがみんなに褒められて、お金を生み出す。町に誇りをもって帰ってきたわけです。町の人みんなが編集者なんだってことを、佐藤さんはしっかりと広めているんです」(指出さん)。
現在、佐藤さんは、「松本亭一農舎」というゲストハウスをつくり、忍者屋敷のようなカラクリを造って集客したり、地元の子どもたちが夜8時まで滞在できるよう親御さんにお願いし、他県の人と知り合い、地元や物事を複眼的に見るきっかけを与える場としても活用。「完璧すぎると、取り付く島がない。” 関わりしろ”…のびしろ、のりしろといってもいいんですが、そういうものがあった方がいい」(指出さん)

原点は、おばあちゃん

秋田県・小坂町で生まれ育った栗山さん。小さいときからおばあちゃん子で、一緒に畑仕事をしたり、山に入っていたそうです。高校から農業高校へ進学を考えていたところ、周囲の勧めもあって大学で農業を学び、食品会社を経て3年前にUターンしました。
山菜を好む人はたくさんいますが、熊の問題もあり、山菜採りに出かけて行方不明になったり、命を落とす人もいるそうです。文字通り、命がけ。では、山の名人が採ってくるものを分けていただいてはどうか?と山菜採りの代行サービスを思いついたそうです。注文を受けてから、その時期になったら60~80代の「山の名人」たちが山に入り、採ってきたものを分けてもらい、届けるシステム。「○kg○円」という販売の仕方ではなく、山菜にかける思いもお客さんに届けることができたら…と考えていたところ、浮かんだのがおばあちゃんの姿でした。「たとえば、春にほろ苦いタラの芽やフキノトウ菜を食べるのは、冬に体にたまった毒素を排出するため。春のイメージが強い山菜ですが、小坂町では塩漬けにして一年中食べるんです」(栗山さん)。皮むきや処理の仕方、そんな当たり前を教えてくれたのが、おばあちゃんでした。そのスキルこそ大切なのでは?と気付き、キャッチコピーを「山菜採り代行サービス」としました。

山菜の代行サービスが、おばあちゃんたちの張り合いに

関東からの注文が多く、人気はミズ。「水辺や湿ったところに生えていて、秋になると実がなります。シャキシャキしていて赤い根本にはとろみがあって」(栗山さん)。注文後、楽しみに待っていてくれる様子や、到着後の感想を電話やメール、葉書で送ってくれる声が何よりの励みという栗山さん。「熊のニュースが出ると、採りに行くおばあちゃんたちを心配するメッセージも届くんですよ」(栗山さん)。そんなコミュニケーションが功を奏し、「東京の人に送るから、ちゃんといいもの、とってこねばね」と、おばあちゃんたちの張り合いにもなっているようです。
これまでの活動が評価され、環境省主催の「Good LIFE AWARD」をはじめ、数々の賞を受賞。式には、おばあちゃんと一緒に出席したそうです。「この賞をいただいてから、メディアに取り上げていただく機会も増えました。おばあちゃんたちにも取材の対応をしてもらって。東京からいらっしゃる方にはぜんぜん秋田弁が通じなくて、通訳してます(笑)」と、栗山さん。年齢差50年ぐらいの仲間と、すてきな関係を続けているそうです。

小麦アレルギーを機に、自然療法に興味を持って

島根県の酪農家の家に生まれた小倉さん。お父さんは毎晩1時まで仕事をしていて、牛のお産ともなれば、24時間・365日、家族総出で手伝ったそうです。それでもなかなか豊かにならないご両親を見て、「どこかで農業に対する怒りを抱いていた」と小倉さん。大学進学とともに、将来は地域の問題解決を仕事にしようと決意。石見銀山の世界遺産登録を目指すプロジェクトなどへの参加を経て、フェアトレードの会社に就職しました。「安全なものを食べたいと思ってたくさん働いて、貴重なオーガニックのものを買って。両親はそれこそ野草を採ったりしているのに、私は消費ばかりして何をやっているんだろうって、空しくなったんです」(小倉さん)。東日本大震災をきっかけに、小さくてもいつか自分で起業しようと思うようになった小倉さん。そんな折、小麦アレルギーを発症したのです。

耕作放棄地を耕しながら、玄米麺をつくる

「今にして思えば、陽に転ずるきっかけだったと思います。意外とそういった食の選択肢がない方、アレルギーの方が多いとわかりまして」(小倉さん)。食の選択肢を増やそう、と薬膳を学んだ後にUターン。「私が暮らしている場所は中山間地域で、人口が約1200人、高齢化率40%。耕作放棄地が年々増えているんです。自然療法に興味を持ち、耕作放棄地を耕しながらグルテンフリーの玄米麺をつくるようになりました」(小倉さん)。
今、宮内舎のメンバーは5人。そこに、子育て中のお母さんたちや、週末に東京からやって来る人が加わり、梱包を手伝ってくれるのだそう。「田んぼの周りに野菜を作れば、農薬が飛んでこないのでは?」と、別の地域から毎日通っては野菜を作ってくれる人たちもいるそうです。そうして再生した耕作放棄地は、現在、2ha。8名の農家の方と契約し、お米を作っているそうです。オフィスのとなりには、60頭の牛と3匹の猫もいるそう。

従来の農業のイメージを変える

「40~50年、ご自身でお米作りをされてきたプロに「オーガニックの農が流行っているんですよ」とお勧めしても響かないのですが、ご自身の孫に食べさせるという視点になると、突如として解像度が上がるんです」と、小倉さん。先輩たちがだんだんと無農薬に変えた結果、小倉さんが暮らす地域は、オーガニックタウンになってきているのだそう。「お米づくりをして4年。農業は儲からないけれど仕方がない、という声を全国どこでも聞かれると思いますが、恰好いいとか、儲かる、ということを自分たちの未来のためにも考えて行こうとしています」と、小倉さん。JAの買取額の2倍を目指し、現在、1.9倍の買取額を達成したそうです。

10年後の景観を守るために

田んぼは、食の確保はもちろん、年長者から若者へ文化を継承する役割もあり、子供たちの遊び場や地域の方の交流の場でもある、と小倉さん。中山間地域での栽培は、山の境界線辺りまで草刈りをしなくてはならず、すべて農業従事者の労力で賄われているそうです。「10年後、この景色が当たり前にあるかっていうと、ちょっと難しいかなというぐらい、危機的な状況。バリでは、棚田の近くでカフェを営む経営者が、景観にお金を払う制度があるそうです。日本にもそういった感覚が必要かもしれませんね」と、小倉さん。

関係性を育めることがうれしい

麺・スープ・具のすべてに野菜を使っている東京のラーメン店「ソラノイロ」へ玄米麺を卸している小倉さん。そのご縁でスープに使うにんじんを作ることになり、地域で若者2人と4人のおじいちゃんが「6人のにんじんの会」を発足。年間1000kgのにんじんを生産し、ドレッシングの商品開発にもつながったそうです。
「小倉さんも栗山さんもそうですけれど、関係がひとつのブランドになるって、いいですね」と、指出さん。関係にお金を払った結果、また新しい関係が生まれて、それがニンジンになったり。いい意味でビジネスにつながるのかもしれない、と続けました。
「卸し先の店舗さんへ作ってくれたおじいちゃんの写真を一緒に送ると、それをお客さんに見せながら売って下さるそうで。いつの間にかおじいちゃんファンの会が発足しているんです」と、小倉さん。
「24時間の中で、どれだけ自分が物事に関わっているかが大事な時代。誰かに任せきりのものが多いほど、もったいない。買い物、暮らし、仲間との関係、呑みに行く場所も。自分がどれだけここに関われているかを感じた方がいいんじゃないですかね」(指出さん)

トークセッションを振り返って

「お二人とも、今ご自分が立っている場所と、見ている人がしっかりあるんだなと思いました」と、指出さん。「栗山さんは山の名人の皆さんをとても大切に考えているし、故郷のことに軸足を置き、そこから社会との関係性を作り、地元の人たちが喜ぶようなお仕事をされているなと感じました。小倉さんとは、すごく考え方が近くて。関係する人たちの顔を思い浮かべながら、少しづつ、手作り感のあるかたちで広げているところが、『ソトコト』に近いと思いました。お二人とも危なっかしさがないので、「仲間になりたい」「一緒にやりたいな」って考えさせてくれるという意味で、” 関わりしろ”感がとても強い。未来を作っていく手ごたえにあふれているなって思います。」(指出さん)。今、地域と社会の両輪の仕事をする人は、自分が楽しいことをする人が増えているそうです。「自発的に楽しいのは、仕事のモチベーションとしてとても大切。(お聞きの)みなさんも日常の中で迷ったら、自分ごととして楽しいかどうか、という視点に立ち返ってみるといいかもしれないですね」(指出さん)
「コミュニティってとても大事なんじゃないかなって思います」と、栗山さん。「山の名人がいてこそ、私もビジネスとしてできているので。山菜は、栽培しているわけではなく天然のもの。環境を考えないと今の仕事は成り立たないですね。すべてをひっくるめて、改めて自分も仕事ができているんだなって感じました」(栗山さん)。玄米麺を初めて食べて、すごくおいしかった、と絶賛。「より素材に近いものって、優しい味わいになるじゃないですか。いろいろなところで加工されたり、添加物が入ってしまいがちだけれど、そうせず、原点に戻ることを大事にして。ニーズは多いんじゃないかなって思います」(栗山さん)
「編集力についてお話があったかと思いますが、地域を、第三者的に少し俯瞰して眺めてみる。つい土の中の微生物に目が行ってしまうけれど、なるべく俯瞰してみる。言葉の力がものすごく勉強になりました」(小倉さん)

今後の展望は?

「地域で暮らす人たちがいてこそ、今の風景があると思うので。残していくことを使命に、地元愛をエネルギーにしてこれからもいろいろなことにチャレンジできたら」と、栗山さん。
「島根県はとてつもなく遠くて、飛行機で来る以外ないんですけれど。もしよろしければ、宮内舎を訪ねるために、来ていただけたらうれしいです」と、小倉さん。
「編集の学校みたいなものをつくろうかなって思います。地域に新しい人が入っていくことと同時に、地域の人たちが土地のことを面白がれるような場所があった方がいいんじゃないかと思って」と、指出さん。まち・農業・水をテーマにしながら、編集の視点でより多くの人に伝えることを学べる場所をつくっていきたい、と語って下さいました。「編集って、すごくずるい仕事。「取材で」という” どこでもドア”で、みなさん、お忙しい中時間を作って下さって、恐縮しながら伺っています。たくさんの地域で楽しく、ときにはつらい中で、前を向いてやっている皆さんのお話を聞いていると、ソーシャルとエコアドベンチャーって、両方とも大切な視点だなって思います」(指出さん)曰く、お二方のファンも” 関係人口”。「取り組みに共感して商品を注文したり購入するする人たちを、僕は関係人口と呼んでいます。そこにお住まいの定住人口、観光でいらして過ぎ去っていく交流人口。その真ん中にある関係人口は、一過性でも長期的でもなく、実はとても大切な役割をすることが多くて。エコアドベンチャーも造語だからこそ、頑張って広げて行かなくちゃいけないわけです。その広がりが、未来への手ごたえにつながっていくので、前を向いている言葉っていいですよね」と、締めくくって下さいました。

Column

トークショー当日、ゲストスピーカーの小倉さん、栗山さん自ら、ブースで会場の皆さんとお話ししながら、ご商品を販売しました。

宮内舎

無農薬・減農薬で育てた玄米麺。グルテンフリーなので、小麦アレルギーの方も安心してお召し上がりいただけます。コシが強く、香りも豊か。アレルギー対応の代替え食品というより、新しい麺のジャンルとして選びたくなるおいしさ。少量の水で2~3分でゆでることができ、アウトドアでも活躍しそう。うどんやパスタのような感覚で、気軽に調理できます。食べることで、オーガニックへの応援にもなります。

森の宅配便

栗山さんが住んでいる地域には、三百万本のアカシアの木があるのだそう。昔、鉱山が栄えたことから、煙に強いアカシアの木を植えたら、たくさん育ったのだそうです。今回、山菜は収穫の時期が過ぎてしまったので、栗山さんも食べて育ったという地元の養蜂家が育てたアカシアのハチミツをお持ちくださいました。向こうが透けて見えるほどクリアな蜂蜜。しっかりとした甘味がありました。
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