8/Report

渋谷の記憶を未来へつなぐ。「渋谷アーカイブ写真展 2025」

作成者: SHIBUYA HIKARIE 8/|2026年5月1日(金)


渋谷アーカイブ写真展2025

投稿日:2026年5月1日(金) 
「100年に一度」と言われる大規模な再開発が進み、日々その姿を変えていく街、渋谷。昨日まであった風景が、今日には新しいビルへと塗り替えられていくスピード感に、少しだけ寂しさを感じている方も多いのではないでしょうか。そんな移りゆく渋谷の「日常」を写真で記録し、過去から未来へと記憶のバトンをつなぐイベント『渋谷アーカイブ写真展 2025』が、渋谷ヒカリエ8階の8/COURTにて開催されました。

この写真展の大きな柱となっているのは、道玄坂で代々商売を営む大西陽介さんの父・忠保(ただやす)さんが遺した膨大な写真です。大西さんは、現在渋谷道玄坂の青年会副会長を務め、ご自身の商売とともに、渋谷の街の発展のために、同じようにここで商売を営む方々と協力しながら活動を続けています。

そんな大西さんが、 13年前に亡くなったお父様の遺品を整理していた際、数百本にも及ぶネガフィルムが発見されたのが、この写真展を開催するに至るきっかけとなりました。 かつてカメラサークルで社会派の写真を撮っていたお父様が、これほどまでに渋谷の街並みを記録していたとは、大西さん自身も驚いたといいます。その後、 2021年の『渋谷公園通り写真展 1977–1997』での出会いをきっかけに、アーキビストやデザイナーたちの協力のもと、この貴重な記録が世に送り出されることになりました。

3回目となる今回のテーマは「名づけられた渋谷の通り」です。渋谷駅周辺の31の通りに焦点を当て、路地裏から大通りまで、それぞれの歴史や由来とともに街の個性を紐解きました。

時代とともにすっかり様子が変わってしまった渋谷各所の場所を特定する作業は、苦労の連続だったと大西さん。そんな中ヒントになったのが「最も変化の少ない“道路の形状”。古い住宅地図や商店の看板を根気よく照らし合わせて特定を進めた」と、話してくれました。

 

展示のユニークな点は、各写真に添えられた二次元コードです。これをスマートフォンで読み取ると、Google ストリートビューが起動し、写真と同じ場所の「現在の景色」を即座に見比べることができます。

1960年代には人影もなく、犬が一匹だけ座っていた通りが、今では世界中から人が訪れる賑やかな通りになっている……。そんな街のダイナミズムを、指先ひとつで体感できる工夫が来場者の人気を集めていました。 

会場には、昔を懐かしむ年配の方から、かつての看板文化や街並みを新鮮に感じる若者まで、幅広い世代が訪れていました。地元の方々からは「昔はよかった」という感傷だけでなく、「こうして変わっていくのが渋谷だよね」という、変化を前向きに捉える声が多く聞かれたのが印象的でした。 

また、展示を見た海外の来訪者からも「自分たちの地元では100年、200年と建物が変わらないのが普通だが、半世紀ほどでこれほど激変する渋谷はクレイジーで興味深い」という声も寄せられたといいます。

こちらは、渋谷の歴史を年表にしてまとめた「渋谷タイムライン」。

渋谷は、戦後から「生き物」のように変化し続けてきた街であり、まさに今の時代もその変化の渦中にいるといえます。そして他の地域よりも変化の早いだからこそ、それぞれの過去を改めてアーカイブし振り返ることで、見る人それぞれの思い出と重なり郷愁を呼び起こすものになるのかもしれません。

 

これだけ早いスピードで変化してきただからこそ、「渋谷」のはそれぞれ少しずつ違った印象を持っています。そうした渋谷への思いを「単に懐かしむだけでなく、地域の変遷や文化を可視化することで、今を通じて過去と未来をつなぐ鑑賞体験の提供を目指している」と、大西さんはこの写真展の意義を語ります。

そしてこの展示が、渋谷のシンボルとも言えるヒカリエの「8/」で開催されることには大きな意味があります。かつて路面電車が走り、東急文化会館が街の文化を支えていた場所に建つヒカリエで、過去の記録を見つめ直す。 

窓の外に広がる「現在の再開発」を眺めながら、足元の「かつての日常」を知ることで、渋谷という街の厚み(層)をより深く感じることができます。 この場所は、単なる通路ではなく、過去と未来が交差する「記憶の交差点」として、訪れる人々に新たな視点を与えてくれました。

●INFORMATION

渋谷アーカイブ写真展2025

開催期間  2025年11月18日(火)ー2025年11月30日(日)
      11:00 - 20:00(※最終日は18:00まで)
開催場所  渋谷ヒカリエ 8F 8/COURT
主催  Commons Archive Collective
共催 渋谷道玄坂商店街振興組合
 アーツカウンシル東京[地域芸術文化活動応援助成]