8/

06/d47 SHOKUDO

和歌山県 田辺市を訪ねて 「スタッフのお気に入り編」

和歌山県「田辺定食」開発のために向かった、食い倒れ取材ブログも今回で最後となります。

 

今回は「スタッフのお気に入り編」と題し、たくさんの食材や生産者の方々との

出会いがあった取材の中でも、特に印象深かった、「おかいさん」と呼ばれる

「茶粥」や、「みかん畑」を訪ねたときのお話をします。

 

レモン.jpg

 

 

 

 

 

食べて食べて…の田辺取材では、本当にたくさんのおいしいものに出会いました。

 

秋から冬にかけて、三陸沖から熊野灘に下りてくる、脂の落ちたさんまを使って作られた

という歴史のある「さんまずし」は、今でもお祝い事の席などに登場するそうです。

 

さんまずし.JPG

 

熊野古道でも有名な田辺市。

 

地域によっては、切腹を意味する腹開きを避け、背開きで作られる場所もあることなど、

食文化にも熊野古道の影響が感じられました。

 
 

和歌山の歴史を感じる食べ物のひとつに「茶粥」があります。

 

料理長が、今回の取材で最も感動していた、と言っても過言でないのがこの「茶粥」。

むこうでは「おかいさん」と呼ばれています。

(「おかゆさん」と間違って言うと、「ちゃいます!おかいさんです!」と地元の方に

突っ込まれました。)

 

茶粥.JPG

 

お茶の香りとお米のとろみが優しい味。汁気が多いのも特徴的です。

 

 

江戸時代に、年貢の徴収に困っていた農民が、腹ごしらえのために米を増やして食べていた、

というのがこの「おかいさん」。

今でも食卓の真ん中には「おかいさん」の入った鍋が置かれているそうです。

田辺人のソウルフードでしょうか。

 

 

「夏の暑い時には、冷蔵庫で冷やした「おかいさん」を白いご飯にかけて食べますねん。

茶碗6杯はいけますわ!」という地元の方もいらっしゃいました。

 

 

これに梅干しや、和歌山県の特産品、甘めのお味噌「金山寺味噌」を乗っけて食べてもおいしいです。

これは飲んだあとの締めにもオススメですよ!

うちの料理長のように、これを食べて心の底からホッとしていただきたいです。

 

 

和歌山といえば、みかんも有名ですよね。

今回は「紀州原農園」の原さんに、農園を案内していただきました。

 

「まずはレモンから始めましょうか!」と、もぎたてのレモンをカットして渡してくださる原さん。

 

レモンをその場で.JPG

 

酸っぱい!

けれどもジューシーな果肉と、その場に広がって行く香りが、私たちを幸せな気分にさせてくれました。

 

その後も、「はい、これは紅まどか」

みかん.JPG

紅まどか.JPG

 

 

「これは黄金柑」「これは…」と、木々の間を進みながらどんどん食べさせてくれます。

 

 

始めはひとつひとつ名前をメモし、写真を撮っていたのですが、

どんどん進んで行く原さんに追いつかない!

 

グイグイ行く原さん.JPG

 

最後には自分の胃袋で感じよう、と、記録は諦め、食べることに集中することに(笑)。

 

みかんであんなにお腹いっぱいになったのは初めての経験!おいしかったー!

20種類ほど、食べさせてもらったのではないでしょうか。

 

イメージ 1.jpg

 

山の斜面に40種類程のみかんの木が生えており、反対側の山を見れば

梅の花でピンク色の山が見える。

とても美しく、今でも目に焼き付いている光景のひとつです。

 

 

ところで、みかんは挿し木で種類を増やしているらしく、全国に生えているみかんは

クローンのように、同じ遺伝子を持っているのだとか…。

「えっ、どういうことですか?」と聞くと、「この話をすると止まらなくなるんだ…!」と

急に目の色が変わった原さん。

 

剪定する原さん.JPG

 

原さんが、小学校4年生の時に行った自由研究は「みかんの標本作り」。

今でもその標本は、地元のみかん資料館に展示されています。

 

 

みかん愛に溢れた原さんのみかんは、美味しいのはもちろんのこと、ひとつひとつが魅力的に

映りました。

食堂で、いつか、原さん主催のみかんの勉強会がしたいなぁ、なんて想いが膨らんだほど、

原さんのお話には引き込まれてしまいます。

もしその時は、挿し木の話やクローンの話など、みかんについて、たくさんお話していただきたいですね!

 

みかん畑の景色.JPG

 

あのみかん畑で過ごした時間と、あの空間に広がっていた香りは、未だに思い出す度に

顔がほころんでしまいます。

 

 

 

今回、こちらのブログでご紹介できなかった方も、たくさんいらっしゃいます。

 

本当は、田辺であった事柄、隅から隅まで漏らすことなくお伝えしたい!

 

のですが、文章にまとめると途方もない量に…。

ここに記せなかったことは、食堂に来て頂いたお客様に、直接お話していきたいと思っています。

 

 

田辺で暮らしてきた方が、それまで当たり前だと思っていたものは、東京から来たわたしが見ると

非常に新鮮に映り、いくつもの驚きと感動に溢れているものでした。

 

 

その土地の方たちと一緒に田辺の魅力を発見し、出来上がった田辺定食は、田辺の「ふつう」の贅沢を

表した定食なのではないかと思っています。

 

 

「ひとつひとつの料理に、それぞれのストーリーがある」。

改めてそのことに気付かされ、背筋の伸びる想いとなった取材でした。

 

 

取材にご協力頂きましたみなさまには、本当に感謝しております。ありがとうございました!

 

 

田辺定食 コピー.jpg

 

 

和歌山県・田辺定食は、昼夜各15食ご用意しております。

田辺に暮らす方たちの日々の生活を、渋谷で感じていただけたら幸いです。

 

(d47食堂 菊地妙子)