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05/design travel store

漆の勉強会を終えて

現在、d47 design travel storeでは、岩手「浄法寺の漆」を特集しています。

特集に合わせて、d SCHOOL「わかりやすい漆」の勉強会を行いました。

 

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講師にお迎えしたのは、岩手県二戸市浄法寺より、浄法寺漆器を製作する滴生舎の塗り師小田島勇さんと、

漆掻き師で塗り師の鈴木健司さんです。

 

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漆器を実際試しながら、進めていきます。

まずは、漆器のコップ「ねそり」で冷たいりんごジュースと、漆のプレートにのせた郷土菓子「がんづき」をいただきます。漆器はすべて、滴生舎よりお借りしました。

 

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「浄法寺の漆」と聞いても、分からない方も多いでしょう。

日本一の漆の産地が、岩手県二戸市浄法寺です。

平成24年度の資料によると、日本で使われている98%が外国産(ほぼ中国産)で、残りの2%が国内産、内7割が浄法寺産です。場所によっては、国産と価格が10倍も違うそうで、とても貴重なことがわかります。

 

浄法寺はお寺ではなく、天台寺というお寺の麓にある町名。現在は二戸市と合併し、浄法寺地区は4,000人の小さな町です。「浄法寺の漆」は、1200年頃前より、天台寺で使うお椀を作るために始まったといわれています。1960年代に、安価な漆器が流行し、一度途絶えてしまいますが、1980年代に、浄法寺産漆で漆器を作ろうと、浄法寺漆器工芸企業組合の尽力のもと復活します。

 

現在、浄法寺で漆を採取する漆掻き師は20名。

それぞれ、漆の山を持つ地主から、漆の木を1本1,500円程度で、1シーズン400本近く購入して、6月から10月くらいまで漆を採取していきます。

 

漆の木は、表面に傷をつけることで、傷を治そうと漆を分泌するそうです。

実際、漆掻きを見せてもらいました。

 

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乳白色の漆がじんわりとにじんできます。1日100本の木をめぐり、少しずつ少しずつへらで採取。

 

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1回傷を付けたら、4、5日木を休ませます。1シーズンで、1本の木から牛乳瓶1本分(約200ml)しか採れないとは驚きです。10月が終わり掻き切ったら、木を伐採します。これを殺し掻きといいます。そこからまた15年、苗からだと20年かけて育てていきます。

 

日本一の漆の生産地でも、漆掻き師の高齢化が進みます。修業に来ても、地元に戻る人が多く、浄法寺に残る人はほぼいないそう。また、漆の木は毎年1万本近く伐採されるため、二戸市では、漆の木の植樹や、育てることを奨励しています。道具を作る職人も同様に後継者問題があります。漆掻きの道具の金属部分を作る職人は今や1人。漆器を塗るための刷毛を作る職人は日本で2人。厳しい現状です。

 

漆器作りには、漆の苗を植えて育てる人、漆の掻き子、木地師、塗り師、漆掻きの道具を作る鍛冶屋、塗り師の刷毛を作る人……など、多くの職人が関わって1つのお椀ができ上がります。

 

漆器をつくる工程もとても時間がかかります。

白木の木に漆を塗る木固めからはじまり、ロクロで研ぎ、弁柄(赤い顔料)で内側を塗り、1日乾かして外側を塗り、また1日乾かして研磨します。これをセットに7、8回繰り返し、ゴミが入らないよう別室で仕上げの上塗りを行います。

 

値段には意味があります。

漆器づくりに携わるおふたりの話しを聞いて、ますます浄法寺の漆器に愛着が湧きました。

 

最後は、d47食堂の料理人岡竹が作った、温かな郷土料理「ひっつみ」を汁碗で試食。

 

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話しを聞いた後に、使う器、いただく料理は格別。吸い付くような口当たりは漆器ならでは。よさを実感します。

 

毎日使うための浄法寺の漆器。

新しい年を、浄法寺の漆器で迎えてみませんか。

 

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NIPPON VISION MARKET「岩手 浄法寺の漆」

2015年11月26日(木)~2015年12月28日(月)

11:00~20:00(最終日は17:00まで)

d47 desing travel store

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d47 design travel store 澤田

 

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