ティーカップなどで馴染みのあるミントンは1793年、イギリス窯業の中心地ストーク・オン・トレントで設立されました。中世ゴシックの象嵌(ぞうがん)タイル※1の再現や、色鮮やかな「マジョリカ釉※2」の開発など、新しい技術の開発に積極的に取り組み、また人気の建築家やデザイナー、美術家の起用によって斬新なデザインが生まれ、テーブルウェアからタイルに至るまで、19世紀に最も注目を集めました。
当時イギリスでは、社会全体が豊かになり、人びとは “暮らし”に目を向けるようになります。この社会の動きから、ミントンはいち早く多色刷りのタイルカタログの発行を始め、消費者に“選ぶ楽しみ”を提供すると同時に、現代のようなタイル流通の仕組みを築きました。
本展は、INAXライブミュージアム「世界のタイル博物館」のコレクションから、多彩なミントンのタイルを展示し、ヴィクトリアンタイルの先駆的な役割を担った功績や、美しい装飾タイルの数々をデザイン別に、カタログのページに見立てて紹介していきます。
タイルが生み出した、現代にも通じる新しい“暮らし方”や“住まい方”。 当時の人びとが心躍りながらカタログをめくり選んだ、タイルの楽しみを体感ください。
※1 象嵌タイル:ベースの色に異なる色の材料を彫りこんで図柄を表現したタイル
※2 マジョリカ釉:従来の釉薬の艶に色の豊かさが加味された透明あるいは半透明の釉薬(イタリア・スペインで古くからある「マヨリカ」とは技法的に異なる)